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【解説】最新の膵がんの術後化学療法

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

すい臓がんには抗がん剤治療を実施し、腫瘍細胞の根っこまで取り除き再発率を低下させる治療があります。アジュバント(adjuvant)と呼ばれている術後化学療法についてご紹介します。

手術したら終わりじゃないの?
手術に抗がん剤治療をセットすると再発する期間を延ばすことができるんです。
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すい臓がん

すい臓

膵臓は、胃の後ろにある、長さ20cmほどの左右に細長い臓器です。右側のふくらんだ部分は膵頭部(頭部)、左側の幅が狭くなっている部分は膵尾部(尾部)、膵臓の真ん中は体部といいます。膵管という細長い管が、膵臓を貫いて網の目のように走っています

すい臓がんとは

膵がんは外分泌系(消化酵素の分泌系)がんと内分泌系(ホルモンの分泌系)がんに大きく2つに分けられます。外分泌系のがんが95%を占め、なかでも膵管の上皮から発生する浸潤性膵管がんが最も多く、全体の85%を占めます。また、最近発見されたがんで、まれにしか発症しませんが、比較的予後のよい粘液産生膵がんがあります。

膵がんは50~70歳、特に高齢の男性に多いがんとされています。膵臓には強力な消化酵素(アミラーゼ、トリプシン、リパーゼなど)を分泌する外分泌腺と、ホルモン(インスリンなど)を分泌する内分泌腺があります。これらの分泌液が通る膵管にできるがん(膵管がん)を中心に、膵がんが増えています。

一般的に膵管がんは膵管上皮細胞の過形成(かけいせい)や異形成(いけいせい)から、前がん状態を経て発がんし、膵管上皮内癌になり浸潤(しんじゅん)癌へと進展していくと考えられています。

膵臓がんと新たに診断される人数は、男性では1年間に10万人あたり約29.1人、女性では1年間に10万人あたり約25.5人とされています。

参考:国立がん研究センターがん情報サービス


治療方針

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。とてもざっくりとした表現になってしまいますが、がんの深さが粘膜および粘膜下層にとどまるものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」といいます。早期がんは手術を行い、原則抗がん剤治療を実施するため術後化学療法という名前の治療方針が定まります。


発生要因

膵臓がんのリスク因子としては、慢性膵炎や糖尿病にかかっていること、血縁のある家族内に膵臓がんになった人がいること、肥満、喫煙などとされています。


治療成績

今回は術後化学療法のみ抜粋をしてお話ししたいと思います。現在、すい臓がん術後化学療法について、手術で切除可能なステージⅠ期~II期およびⅢ期の一部の膵がん患者(転移していない人を対象にした臨床試験です)に対する再発のリスク低減と生存率の向上を目的とした術後化学療法です。

従来の標準治療薬であるGEM(ゲムシタビン:ジェムザール)と、TS-1単剤の効果を比較した臨床試験(JASPAC-01試験)が実施されました。その結果TS-1を術後に投与することによって、GEMを投与するよりも死亡のリスクを44%も減らすことがわかりました。現在の標準治療薬であるGEMと比較してTS-1は手術後の膵がん患者の生存率を大幅に改善することが示されました。


術後化学療法の治療の目的と期待される効果

治療の目標は「再発率の低下」「生存期間の延長」です

手術によって根治に近い状況を作っておりますが、再発をしてしまっているのが現状です。そのため再発の頻度を下げるため、術後化学療法を実施しております。


術後化学療法(TS-1)

TS-1単独療法

薬剤師まさブログ

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。 日本で開発されたTS-1は様々ながん種に使用されており、とても良い薬だと思います。海外では副作用が日本人に比べて多く、なぜが日本人に合っている抗がん剤の1つでもあると思います。そんなTS-[…]

薬の注意点について、以前まとめたものがございます。ぜひ見て下さい。


手術ができない場合や再発した場合

抗がん剤治療・放射線治療

手術ができない場合や再発した場合、化学療法を用いることで生存期間を延長したり、症状を和らげたりする効果が示されております。また症状緩和を目的とした放射線治療と組み合わせて実施されることもあります。

  • FOLFIRINOX療法 (フルオロウラシル[5-FU]+レボホリナートカルシウム+イリノテカン+オキサリプラチン)
  • ゲムシタビン(ジェムザール)+ナブパクリタキセル(アブラキサン)併用療法
  • ゲムシタビン単剤治療
  • ゲムシタビン+エルロチニブ(タルセバ)併用療法
  • テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1:ティーエスワン)

と上記の治療が推奨されており、手術ができなくてもしっかりとした治療方法が確立されております。お気づきかもしれませんが、またTS-1が登場しておりますね。手術後にTS-1を使用した場合、効果が得られない可能性があるため使うかどうかは相談が必要になりますが、手術なしで治療する場合には選択されます。


2018年に新たな結果が報告されました

術後化学療法のmodified FOLFIRINOX

先ほど、再発した場合には使用することができるFOLFIRINOX療法ですが、手術後に使用すると効果が高いことが【海外で】報告されました。

治療効果としては、 modified FOLFIRINOX(mFFX)療法群においては54.4ヵ月とさらなる延長が認められた。

※ JASPAC-01試験でのS-1群におけるOS期間の中央値(MST)は46ヵ月

治療効果としては高いのですが、やはり強い治療という所で副作用も発現も多いとされております。日本では安全性を考えてもTS-1が術後化学療法として不動のものかと思われます。日本人での結果にもよるのかもしれませんね。今後更なる発展が得られるかもしれません。


最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

薬剤師まさ

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