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【解説】アバスチン(ベバシズマブ)の注意点

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

近年抗がん剤治療は著しい発展をしている中で、多くは複数の薬剤を組み合わせることで、より素晴らしい治療方法が生み出されてきました。

組み合わせの代表的な薬剤として、ジェネリックが最近販売されましたリツキサンというお薬が挙げられます。分子標的薬と言われる代表格であり、がん細胞だけを狙う画期的な薬となりました。今回ご紹介するアバスチンも分子標的薬の1つです。

アバスチンも似た作用機序を持つ仲間がおり、サイラムザ【ラムシルマブ】やザルトラップ【アフリベルセプト】の点滴製剤、内服ではインライタ【アキシチニブ】があげられます。

アバスチンはなんでも使えるの?
そういうわけではありませんが、多くの癌種で使うことができますよ。

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アバスチン(ベバシズマブ)

アバスチンとは

アバスチン(ベバシズマブ)は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対する抗体です。このVEGFの働きを阻害することにより、血管新生【がん細胞が栄養を補給するために血管を自分に取り込む作業】を抑えたり腫瘍の増殖や転移を抑えたりする作用を持つ。分子標的治療薬の一つであり、抗がん剤として使用されています。他にも眼の疾患である加齢黄斑変性や糖尿病性網膜症の治療薬として期待されている。


アバスチンの適応

  • 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
  • 扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
  • 卵巣癌
  • 進行又は再発の子宮頸癌
  • 手術不能又は再発乳癌
  • 悪性神経膠腫

に使用することができます。とても幅広く使うことができる分子標的薬の1つです。


主な使用方法

2週間毎に投与する方法

他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブを1 回5 mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内注射します。投与間隔は2 週間毎とし、主に 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌 に対し、FOLFOXやFOLFILI療法、最近では3剤同時併用のFOLFOXIRI療法にアバスチンを上乗せし治療を行います。


3週間毎に投与する方法

他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブとして1 回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射します。投与間隔は3 週間(以上)とします。主に 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌 に対し、XELOX(ゼローダ+エルプラット)にアバスチンを上乗せします。他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはベバシズマブとして1 回15mg/kg(体重)を点滴静脈内注射します。投与間隔は3 週間以上としています。量が多い治療では、主に扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、卵巣癌、進行又は再発の子宮頸癌、手術不能又は再発乳癌、悪性神経膠腫に使用されます。

  • 肺がん治療では、CBDCA(カルボプラチン)+PTX(パクリタキセル)+アバスチン
  • 卵巣癌や進行又は再発の子宮頸癌には、TC(パクリタキセル+カルボプラチン)+アバスチンを用いて治療を実施します。

疾患によって組み合わせ投与量が異なるため、とてもバラバラのように見えますがそれぞれの臨床試験を実施し有用な治療効果が確認されております。継続を困難にさせるほどの副作用が出現することはほとんどなく、減量せずに治療継続することが一般的です。


注意して欲しい副作用

治療を始める前に教えていただきたいこと

  • 現在使っている薬は、薬局で買ったお薬も含め、すべて主治医・薬剤師にお知らせください。薬物相互作用を確認いたします。
  • 以前にお薬や注射の治療を受けて、発疹やかゆみなどが出たことがある方は、あらかじめ主治医・薬剤師に申し出てください。抗体製剤になりますので投与初回のアレルギー反応がないか注意深くモニタリングを行います。
  • 他の医師または歯科医師の治療を受けるときは、アバスチンを含む治療を受けていることを必ず伝えてください。副作用の中に創傷治癒遅延という「傷の治りが悪くなる」という副作用がございます。アバスチンをお休みすることで回避することができますので安全性を確保するためにお伝えください。

高血圧

自覚症状があまりあらわれないので、治療期間中は定期的に血圧を測定することが大切です。血圧計をご購入いただき、毎日測定することをお勧めいたします。急激な血圧の上昇を起こす可能性もあります。万が一著しい上昇があった場合、血圧を下げる飲み薬(降圧薬)による治療を行います。下記のような症状がある場合には、必ず医師・薬剤師・看護師にご相談ください。

  • 安静時にくり返しの測定をしても、最大(収縮期)血圧が180mmHgまたは最小(拡張期)血圧が120mmHgを超える
  • 意識がなくなる、まひが出る、めまいがする
  • がまんできない頭痛、吐き気がする、ふらつき、けいれんがある

粘膜からの出血(鼻、歯肉、腟など)

粘膜から軽度の出血がみられることがあります。鼻血、歯ぐきなどからの出血は通常軽く、自然にまたは圧迫することで止まります。 下記のような症状がある場合には、必ず医師・薬剤師・看護師にご相談ください。

  • 鼻血や歯ぐきなどからの出血が10〜15分たっても止まらない
  • 手術した傷口がひらく、出血する
  • 口から血を吐く(吐いた血のおおよその量や色を担当医に伝えてください)
  • 血便・タール便が出る

痛み・息切れ

治療後、心臓の機能が低下している(動悸・息切れ)可能性があります。抗がん剤の副作用で、虚血性心疾患、うっ血性心不全などを起こす可能性があります。 治療により、血のかたまり(血栓)ができたり、血栓により血管がふさがったり(塞栓)する可能性があります。 違和感を感じた際もしくは 下記のような症状がある場合には、必ず医師・薬剤師・看護師にご相談ください。

  •  胸が痛い(締めつけられるような感じがする)
  • 片足の急激な痛みや腫れ
  • 突然息切れがする
  • 今まで経験したことのない腹痛がある(吐き気、嘔吐、便秘など)

その他の症状

発熱

血液中の白血球数や好中球数が減少することにより、感染症にかかる可能性が高くなります。特に、毎日体温を測り、発熱に注意してください。

倦怠感(だるさ)

無理をせず生活の中に上手に安静を取り入れましょう。つらいときは遠慮なく、担当医や看護師に相談しましょう。

下痢

水分の補給を心がけ、脱水に注意しましょう。下痢が起こると飲水を減らそうとされる方が多いですが、本当に脱水にすぐになります。注意していください

たん白尿

尿中に通常よりも多い量のたん白がみられる場合は、腎臓の働きが悪くなっている可能性があります。定期的に尿検査を受けながら確認をしていきます。

嗄声(させい)

声がかすれるような状態を嗄声と呼び、アバスチンの使用によって5%未満として報告されています。私が担当させて頂いた患者さんでは、比較的多く発症している症状ではないかと思います。なかなか改善することができない症状であり、仕事の中で声を出す仕事をされている方ですと、仕事に支障が出てしまうかと思われます。せっかくの仕事復帰にも関わらず、嗄声で仕事ができない場合には医師・薬剤師・看護師にご相談ください。


最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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