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【解説】ビダーザ(アザシチジン)の副作用と対策


ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

骨髄異形成症候群に使用されるビダーザ(アザシチジン)ですが、多くの副作用を持っております。多くの副作用を持つ反面、抗がん剤としての腫瘍を壊す力もあり、現在の抗がん剤治療において必要不可欠な薬剤たちになっております。副作用を上手にコントロールすることができれば、日常生活を難なく送ることができると思います。副作用と対策について紹介したいと思います。


骨髄異形成症候群?とっても難しい名前の病気だね…
確かにこんなに漢字ばっかりの病名なんてあまりありませんよね。

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骨髄異形成症候群

骨髄異形成症候群とは

骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)は、3種類の血液細胞(赤血球、血小板、白血球)の大もとになる造血幹細胞に異常が起こった病気です。赤血球、血小板、白血球がそれぞれ成熟する3系統の過程に同時に異常が発生する場合だけでなく、まずそれぞれの過程に異常が生じて、次第に3系統へと進行していく場合もあります。1つの病気ではなく、複数の似たような病気の集まりと捉えられているため、症候群(syndromes)と呼ばれます。

参考文献:がん情報サービス


骨髄異形成症候群(MDS)のstage

Stageの変わりにIPSSを用いて評価

一般的にStage〇という表現は、腫瘍の細胞の大きさ・個数・場所を評価し、Stageが確定されておりますが、血液疾患の場合は全身に血液が巡っていることもあり、同じような感覚でStageでは評価することができません(※悪性リンパ腫はリンパ腫細胞がどこに腫瘍の塊を作っているかで評価するためStageを用いています)。その代わりに IPSS(International Prognostic Scoring System : 国際予後判定システム)とIPSS-R(Revised IPSS : 改訂IPSS)を用いて評価されております。

IPSSのスコアリング

IPSSは点数をつけて評価を行い、その点数に応じて「ハイリスク」か「ローリスク」かを評価するシステムになっています。点数内容は、主に3点で評価されています。

  • 骨髄の中の腫瘍細胞の量
  • 細胞を作り出すDNAの異常数
  • 作り出された血液への影響度(ダメージ)

の3点を評価し、その影響度に応じて点数化をして診断をしております。

IPSS/IPSS-Rの表

IPSS

このように骨髄中にどのくらい悪い細胞が占めているかを評価しております。30%が最高値になっておりますが、30%以上いた場合には骨髄異形成症候群ではなく、急性骨髄性白血病と診断が変わります。なので急性骨髄性白血病とまではいかない一歩手前の病気であることがわかります。

この3つの評価された合計点数から、ローリスク群とハイリスク群に分類し、治療方針を固めていくとされています。

IPSS-R

では、改訂版のIPSS(IPSS-R)はどのような形になっているかというと下記のような形で分類されています。

先ほど示したIPSSよりも多く見えますが、実は

  • 骨髄の中の腫瘍細胞の量
  • 細胞を作り出すDNAの異常数
  • 作り出された血液への影響度(ダメージ)

の作り出された血液(好中球・ヘモグロビン・血小板)を具体的にしただけになっていますので、細かく分けられたのが改訂版となっているのかとご理解いただければと思います。

これも同様に点数の合計値を見て、骨髄異形成症候群のリスク分類を行い治療方針を決定するために用いられています。


ビダーザ(アザシチジン)の適応患者

高リスクであり、同種移植が困難であることが条件

骨髄異形成症候群のリスクでも記載しましたが、骨髄異形成症候群には予後に影響を及ぼすスコアリングがあり、その数値に合わせ高・低リスクに分類されます。一般的にInternational Prognostic Scoring System(IPSS)におけるLow, Intermediate(Int)-1を低リスク,Int-2, Highを高リスクとする。また改訂版であるRevised IPSS(IPSS-R)でVery low, Lowを低リスク,HighとVery highを高リスク と表現されます。

同種移植も重要な治療の1つであるが、移植前の抗がん剤治療から移植後の管理まで非常に負荷がかかる治療が続きます。一般的に年齢や健康状態を考慮して同種移植を選択することが多いです。ただ同種移植は、他人の骨髄や臍帯血、末梢血をもらう上で型が揃っていないと移植すらすることができません。自身の型ともらう型が合うか、全国にプールされているかから確認作業がされ、マッチングすれば同種移植を検討することができます。


ビダーザ(アザシチジン)療法の治療スケジュール

ビダーザ 投与法

薬の名前day1~7day8~28day29~(day1)
ビダーザ(アザシチジン )

1日1回75mg/m2(体表面積)を1日1回7日間、皮下投与又は10分かけて点滴静注し、3週間休薬する これを1コースとして、投与を繰り返す。皮下注射の場合には同じ場所に投与すると皮下が硬くなったり疼痛がある場合があるため、投与部位は毎度変えることで回避します。

臨床試験では連続7日間の投与が推奨されておりますが、病院の都合で月~金(5日間)投与し土日休み(2日間休み)翌週の月・火曜に投与し合計7日間という方法があります。それ以外にも月~金(5日間)だけ投与し残り2日は投与しないという方法があります。いずれも小さな試験で成績が変わらないと報告されており、状態や環境に応じて調整されているのが一般的です。


ビダーザ(アザシチジン) の副作用

採血からわかる副作用と注意点

骨髄抑制

白血病細胞である芽球が出現していたり、白血球が全くいない状態になっているため、骨髄抑制というよりも腫瘍量を減らす=骨髄抑制状態になってしまいます。この治療によって腫瘍が減り、正常細胞が出現することを期待して治療を行います。白血球があったとしても腫瘍細胞であれば正常に働かないため、継続した感染症対策が求められます。採血は骨髄抑制を診るだけではなく、腫瘍量の低下を確認することも併せて行っております。

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白血球を増やす薬:G-CSF

少ないなら白血球を増やせばいいと思い、調べると必ず出てくるG-CSF製剤。これは骨髄異形成症候群の方には投与はあまり推奨されません。

その理由として、白血球を増やすことでがん細胞を成長させてしまう可能性が考えられるためです。このあまり推奨されないという書き方の1つに感染症がコントロール不能になりかけた場合には投与します。感染症のコントロールには白血球がかかせません。腫瘍細胞だけが出現するわけではないので、がん細胞を成長させたとしてもいくつかの正常な細胞も成長させ、感染症の原因菌をやっつけてくれることを期待して投与します。
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実際に感じる副作用と注意点

一番怖いものですよね。何が起こるの?というより自分の体はどうなっちゃうのかというところ。危険をある程度理解していることで、注意すべき点がわかりますので、ぜひ知っていただけると嬉しいです。

抗がん剤の副作用において重要なのは、「いつ何が起こるか」という時期です

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は kofukusayo.png です

上の図に示す通り、時期によって副作用の出現するものが大きく異なります。時期を意識して解説を行いたいと思います。


ビダーザ(アザシチジン) 療法 day1-7までに起こりそうな副作用

気持ち悪さ・嘔吐

副作用対策として吐き気止めは点滴の場合に使うことがありますが、皮下注射の時には内服の吐き気止めを使用することをおすすめします。吐き気のランクとしては中等度と言われており、皮下注射の場合には使われない方を拝見します。皮下注射の場合と点滴の場合、投与経路の違いによって生じる副作用は変わらないと言われております。

結構吐き気止めを使用しないで様子見てみようと言われ、吐き気を訴える方を今まで経験したことがあります。私の担当患者さんには全例入れておりますが、皮下注射の場合でも内服する子をおすすめします。

万が一吐いてしまった場合、2回目の治療では更なる強化をして準備しますのでご安心を。絶対に吐き気が起こらないようにコントロールしてみせます。

トイレでゲーゲーしているイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は吐き気止めも進化しております。また吐き気や嘔吐が出た場合にも使える薬が沢山あります。我慢せず教えてください。

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皮疹(発赤)

点滴の場合にはあまり起こりません。投与経路の違いで皮下注射の場合に唯一多い副作用の1つが皮疹です。基本的には皮下注射になりますので、投与したと事が赤く掻痒感があることがあります。かゆみ止めを上手に使用することで、症状軽減することができますのでぜひ医療従事者に相談してくださいね


ビダーザ(アザシチジン)療法 day8-14までに起こりそうな副作用

骨髄抑制です。

とにかく感染対策を行いましょう。外出時はマスク着用・手洗いうがいは必須です。ですが、家で引きこもり状態になる方もいらっしゃいますが、そこまで厳重でなくても構いません。普段通りの生活で、家に戻ってきたら手洗いうがいをお願い致します。

ただし‼砂埃が凄いところ・埃が多いところ・ガーデニングなどの泥や土を触ることはだめです。カビが非常に多く、一度かかると1か月程度カビの治療をしないといけません。お守りください

骨髄抑制は白血球減少だけではなく、赤血球減少による貧血や血小板減少による出血が考えられます。ふらつきが多くなったかな?歯を磨いていて出血が止まらないや鼻血がよく出てくるなど症状があるときにはご連絡ください


ビダーザ(アザシチジン)療法  day15-21までに起こりそうな副作用

特に新しい副作用はありません。副作用の発現時期の一般例には「脱毛」と記載されておりますが、脱毛はありません。抜けませんので心配しないでください。


ビダーザ(アザシチジン)療法 2コース以降に注意していただきたい副作用

これまた特に新しい副作用はありません。7日目から注意して欲しいと書きました骨髄抑制は常に注意して欲しい副作用の1つかと思います。

白血球が少ないのにビダーザ(アザシチジン)を投与することがあります。これは腫瘍細胞が正常の白血球細胞を作り出せない状態を改善するために治療していきます。なのでとても少ない状態が数か月続くこともあります。絶対に感染症対策をさぼらずしっかりとしてください。また熱が出た際には病院へ連絡です

解熱剤を飲んで早く寝ましたは、絶対に危険です

もし私が担当されていたら、家族まで呼んででももう一度必ず一から指導をします。どれだけ感染症が怖いのかをもう一度ご説明します。私のアドレナリンが強く出ている場合、ウザがられる可能性があるレベルで服薬指導されます。注意してください。もしくは最近もアドレナリン全開で指導してしまったので被害者がいるかもしれません。


家族が考えるビダーザ(アザシチジン)療法 の注意点

自宅の環境的な注意点

普段通りで構いませんが、動物を飼っている方は注意してください。動物から人に感染する疾患を人獣共通感染症(zoonosis)といい、ペットを飼っている場合、様々な感染症の可能性があるため注意が必要です。特に猫・犬・小鳥・ウサギなど接触頻度が高い動物には、注意する必要があります。ペットと暮らす際には、排泄物を避けること・ペットの小屋や水槽、かごの掃除は家族に依頼すること・過剰な接触は避け、接触後は手洗いうがいの徹底を心掛けましょう

ご家族の方の生活

普段通りの生活で構いません。孫と遊びたい。一緒に食事したい。とお孫さんへの影響を考えて孤立してしまう方を何人も見てきました。心配ありません‼

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絶対に欲しい連絡

発熱

何度も記載しておりますが、絶対に連絡が欲しい副作用として、発熱です。白血球が少ないときに起こる発熱は非常に危険です。発熱性好中球減少症と言われる危険な副作用の1つになりますので、必ずご連絡ください。ほかにも普段と異なるし、とても辛いということがあればすぐにご連絡ください。我慢は禁物ですよ。

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最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

薬剤師まさ

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