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どこよりも詳しい(DA-)EPOCH-R療法について

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。今回はEPOCH-R療法について紹介したいと思います。

EPOCH(エポック、イーポック)と呼ばれることが多いです。ちなみに私は、エポック派です。治療強度がCHOP療法よりも高く、腫瘍の悪性度が高いときに使用されることが多い治療方法です。 いきなり治療の説明をされても、暗号のような名前の数々を言われ、いただいた用紙を見直しても理解不能になることがあると思います。ご自宅に帰ってから調べる際、結局わからないこともあるかと思います。ズバッとまとめてみました。 少しでもご参考になると嬉しいです。


前のCHOPでも限界だったのに…横文字の治療方法言われてもわからないよ
実はこの治療方法はR-CHOPにEが加わった治療になっております…と言われてもなんだそれは?となりますよね…。

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(DA-)EPOCH-R 療法

(DA-)EPOCH-R 療法の対象疾患

R-EPOCH療法は悪性リンパ腫を治療するための治療方法です。悪性リンパ腫といっても沢山(80種類ぐらい)ありますので、この疾患とは言い切れない部分があります。ただしR-EPOCH療法のR(リツキサン)はB細胞系という悪性リンパ腫の患者さんの約7割程度に発症するタイプにしか使用することができません。T細胞系の悪性リンパ腫と診断された方はEPOCH療法を行います。

R-CHOP療法を用いて治療を行う代表的な疾患として、この疾患というのはございません。ただし選択肢としてあがる疾患としては、

  • 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)
  • バーキットリンパ腫(BL)
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)

が一般的に挙げられます。上記の診断がされた方はR-CHOP療法を行うことが多いです。ですが、PMBCLやバーキットリンパ腫は、初回治療に使用することが多く、DLBCLには再発時に用いることが多いです。初回に使用する場合には、DA-EPOCH-RというDA(Dose-Adjust)という用量調整したEPOCH療法が推奨されることが多くなっております。そのあたりも解説したいと思います。


(DA-)EPOCH-R療法の治療スケジュール

薬の名前 day1 day2 day3 day4 day5 day6 day6-21
リツキサン R            
オンコビン O      
エトポシド E      
ドキソルビシン H      
エンドキサン C            
プレドニン P    
  • R-EPOCH療法は3週間を1セット
  • 22日目が2コース目のday1になる
  • プレドニンは内服(注射でもOK)
  • リツキサンは別日に行うこともある
  • 体調が悪い場合は開始が遅れることがある

とされております。初回の治療回数は6-8回と言われています。再発の場合には、2~4回程度かと思います。再発時に用いる場合には、ドキソルビシンの生涯投与量が決まっていることからも安全性を考慮して2~4回とされております。

スケジュールは全く同じになりますが、投与量が異なるのがDA(Dose-Adjust)になります。治療の副作用状況(主に採血結果)を見て、問題なさそうならば、エトポシド、ドキソルビシン、エンドキサンを増量します。副作用が強いと感じる採血結果であった場合には、エトポシド、ドキソルビシン、エンドキサンを減らします。副作用に合わせて調節していく治療方法がDA-EPOCH-Rとなっております。

あとは皆様が大嫌いな背中の注射もすることがあります。髄腔内投与と言われる治療方法ですね。これ今度まとめてみたいと思います。


EPOCH-R 療法の治療の目的と期待される効果

治療の目的は根治です。

完全にがん細胞を消すことを考えております。治ったと言い切れないので「寛解」という言葉に置き換えて説明することが一般的ではありますが、完全に消す「寛解」を目指して治療を行います。

期待される効果ですが、StageⅠの方が生命予後は明らかに長いのは事実(明らかに悪性リンパ腫が消える可能性が高いため)ですが、StageⅣであっても寛解を目指して治療を行います。寛解になって2年間再発がない場合は、Stageに関係なく一般的な健康な方と変わらない生命予後があるとMeyo Clinicから報告が出ています。StageⅣは末期?緩和?と表現されることが未だにありますが、違います。がん細胞をすべて消失させるために治療を行います。


(DA-)EPOCH-R 療法の副作用

採血でわかる副作用と注意点

骨髄抑制

白血球や赤血球・血小板など血液の成分が全体的に低下することを骨髄抑制といいます。実際にEPOCH-R療法は入院で治療します。そのため輸血に頼ることはあまりありませんので、貧血が強すぎてふらふら・血が止まらないぐらい血小板が低いということは基本的にはありません。ただ、DA-EPOCH-Rの場合には限界まで増やして治療していくため、輸血が必要になってしまう可能性もあります。ただ輸血した次のクールには減量して体に優しい治療に戻していきます。

気を付けて欲しいのは白血球減少です。白血球減少が起きても、たとえ白血球が0になっても体では異変がありません。ですが、普段風邪をひかないでいるのも体の中に入ってきたばい菌を白血球がやっつけてくれるから風邪をひかずに済んでいるですね。病院もきれいなところではありません。病室にいても日頃の手洗いうがいを行い感染症にならないよう注意する必要があります。

白血球を増やす薬:G-CSF

これを一日でも短くするために白血球を増やす注射を行います。それを皆さんG-CSFと表現することが多いです。G-CSFとは白血球の家族の一員である好中球を増やす指令であり、人工的に作った成分です。それを投与することで感染症になりやすい期間を一日でも短くすることを目的に投与したりしています。


実際に感じる副作用と注意点

一番怖いものですよね。何が起こるの?というより自分の体はどうなっちゃうのかというところ。危険をある程度理解していることで、注意すべき点がわかりますので、ぜひ知っていただけると嬉しいです。

抗がん剤の副作用において重要なのは、「いつ何が起こるか」という時期です。

上の図に示す通り、時期によって副作用の出現するものが大きく異なります。時期を意識して解説を行いたいと思います。


(DA-)EPOCH-R  day1-day7までに起こりそうな副作用

Infusion Reaction/インフュージョンリアクション

アレルギー反応の一種です。リツキサンという薬剤は一部マウスの抗体を使用していることから、体の中に入った一番最初だけ異物として認識されます。初回投与の時だけ注意が必要です。具体的には頭痛・かゆみ・発疹・寒気・息苦しさなど多岐にわたる副作用が出現する可能性があります。投与速度をじわじわと上げながら注意深く見ていきます。速度を上げた時注意して観察していただき、異変がありましたらナースコールを押してください。

気持ち悪さ・嘔吐

副作用対策として吐き気止めは使っております。ですが、まれに出現してしまうことがあります。万が一吐いてしまった場合、2回目の治療では更なる強化をして準備しますのでご安心を。トイレでゲーゲーしているイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は吐き気止めも進化しております。また吐き気や嘔吐が出た場合にも使える薬が沢山あります。我慢せず教えてください。

倦怠感

これはプレドニンを飲み切ったあたりday6.7に出てくることがあります。改善することがなかなか難しく時間が解決してくれるのを待つこともしばしば。ですが、プレドニンを少量ずつ減らずと倦怠感の改善につながることもあり、相談してほしい副作用の1つです

便秘

抗がん剤治療の中のオンコビンという薬が便秘が引き起ると言われております。吐き気止め・オンコビン・倦怠感の活動量低下のトリプルパンチで便秘になります。下剤をうまく使いながらしっかりと排便しましょう。硬い便が出てお尻が痔のようになるのが一番困ります。感染源になることがありますので、柔らかくしましょうね。

口内炎

粘膜障害の一種である口内炎ですが、抗がん剤の直接的なダメージによって傷がついてしまう状態です。こちらもお尻同様に感染源になることがありますので、必死にうがいをしていただけたらと思います。

(DA-)EPOCH-R day8-day14までに起こりそうな副作用

骨髄抑制です。

とにかく感染対策を行いましょう。外出時はマスク着用・手洗いうがいは必須です。ですが、家で引きこもり状態になる方もいらっしゃいますが、そこまで厳重でなくても構いません。普段通りの生活で、家に戻ってきたら手洗いうがいをお願い致します。

ただし‼砂埃が凄いところ・埃が多いところ・ガーデニングなどの泥や土を触ることはだめです。カビが非常に多く、一度かかると1か月程度カビの治療をしないといけません。お守りください。

(DA-)EPOCH-R  day15-day21までに起こりそうな副作用

この頃から脱毛が始まります。

脱毛は必ず起こります。ドサッと抜けてしまいます。だいたい2~3週間後と言われており、2コース目開始する頃から抜けると言われております。治療が終了すれば生えてはきます。ですが髪質がやや弱弱しくなることが多いです。医療用かつら(ウィッグ)の準備をしてもいいかもしれません。

坊主にするのは避けてください‼詳細はリンクに記載してあります。かゆくなってしまうんです~。

(DA-)EPOCH-R 療法2コース目以降に起こる副作用

一般的には21日間の流れを繰り返すと言われております。

末梢神経障害を除いては…

末梢神経障害は3コース目ぐらいから出現すると言われております。特に指先と足の裏に出現してくると言われており、有効な治療方法がございません。基本的には治療薬を減らすor中止が最も有効な対処方法です。医療従事者には痺れの程度がわかりません。必ず状態について教えてください。

他にも困るのが

味覚障害です。

味覚障害は大多数の抗がん剤において発症するリスクがあり、治療で用いる抗がん剤からも味覚障害は必ず起こると言っても過言ではございません。食べやすいものを見つけながら、上手に対処していきましょう。


家族が考える(DA-)EPOCH-R療法の注意点

自宅の環境的注意点

動物を飼っている方注意してください。

動物から人に感染する疾患を人獣共通感染症(zoonosis)といい、ペットを飼っている場合、様々な感染症の可能性があるため注意が必要です。特に猫・犬・小鳥・ウサギなど接触頻度が高い動物には、注意する必要があります。ペットと暮らす際には、排泄物を避けること・ペットの小屋や水槽、かごの掃除は家族に依頼すること・過剰な接触は避け、接触後は手洗いうがいの徹底を心掛けましょう

ご家族の方の生活

普段通りの生活で構いません。孫と遊びたい。一緒に食事したい。とお孫さんへの影響を考えて孤立してしまう方を何人も見てきました。心配ありません‼

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絶対に連絡が欲しい副作用

発熱

絶対に連絡が欲しい副作用として、発熱です。白血球が少ないときに起こる発熱は非常に危険です。発熱性好中球減少症と言われる危険な副作用の1つになりますので、必ずご連絡ください。ほかにも普段と異なるし、とても辛いということがあればすぐにご連絡ください。我慢は禁物ですよ。

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患者さんからよくいただく質問と回答

治療日の尿が赤い…
ドキソルビシンの赤い点滴が排尿時に着色します。血ではないので驚かないでくださいね。
足がつりそうなことがある
一般的に(DA-)EPOCH-Rの副作用説明書には書いてないですが、私はよく患者さんからの話を聞きます。オンコビンの副作用の一種であると考えておりますが、詳細まではわかりません。治療の後半5コースすぎたぐらいから訴える方がいらっしゃいます。特に若い方で言われることが多い印象があります。治療終了すると徐々に改善してきますのでご安心ください。

最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

薬剤師まさ

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