ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。
前立腺がん治療薬では、近年新薬が続々と登場し治療選択が多くなってきました。PSA :prostate specific antigen(前立腺特異抗原) の測定により、早期から発見。むしろ早すぎるぐらいから気づけるようになり、治療によって大幅に生存期間を延長させることができています。そんな前立腺がんの内服治療薬について紹介したいと思います。
前立腺がん
前立腺がんとは
前立腺がんは中高年の男性において注意すべき前立腺の病気の1つです。前立腺がんの発生には主に男性ホルモンが関係しており、加齢によるホルモンバランスの変化が影響しているものと考えられています。が、どのような原因でがんになるかはわかっておりません。
ほかの臓器のがんとは異なり、とてもゆっくりと進行するため、早期に発見できれば、ほかのがんに比べて治りやすいがんであるといえます。(手術を行いますが、手術も侵襲度が低い治療ができます)
定期的に PSA :prostate specific antigen(前立腺特異抗原) に測定していたりした場合には、数値を定期的に追うことができますが、基本的には何も自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることがあります。進行すると最終的には骨やほかの臓器に転移してしまうことがあるため、早期に発見し、適切な治療を行うことが大切になります。男性の人間ドックでは PSA :prostate specific antigen(前立腺特異抗原) を測定することが多く、定期的な健康診断や人間ドックで発見されている例も散見されます。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス/What’s 前立腺がん
疫学
前立腺がんと新たに診断される人数は1年間に10万人あたり117.9人です。年齢別にみた罹患率(りかんりつ)は、60歳ごろから高齢になるにつれて顕著に高くなります。男性では胃がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に罹患率が高いがんです。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス
前立腺がんの原因
前立腺がんのリスクを高める要因として、前立腺がんの家族歴、高年齢が明らかにされています。その他にも肥満、食品(カルシウムの過剰摂取など)、喫煙などについて多くの研究が行われていますが、まだ明らかではありません。
前立腺がん治療
前立腺がん治療の種類
前立腺がんには、「手術療法」、「放射線療法」、「内分泌療法(ホルモン療法)」など、さまざまな治療法があります。これらの治療を単独あるいは組み合わせて行います。また超早期から前立腺がん発見できるため、経過観察することもあります。治療開始時期は一定の基準をクリアしてからでないと治療開始しないようになっております。
基本的にはこの内容が満たされれば治療を行います。難しいので無視してください。医師はこの基準を満たしているかを定期的に確認し治療開始時期を見定めています。「大丈夫ですね」と言われているのは、この基準に満たされていない=治療適応ではないと判断して「大丈夫です」と言っております。
前立腺がんの薬物療法
今回紹介するのは、 内分泌療法(ホルモン療法)についてまとめます。またいつか、点滴抗がん剤治療編を作成したいと思いますが、今回は内分泌療法についてまとめます。
前立腺がんの主な原因は先ほども書きましたが、「男性ホルモン」です。前立腺がんの栄養素は「男性ホルモン」なので、男性ホルモンを作り出さないようにすることが前立腺がんの内分泌療法(ホルモン療法)となっております。なぜホルモン療法と名付けられているのか?ここに理由がありました。
では、どのようにして男性ホルモンを止めるか
オレンジ色に囲まれている
- LH-RHアゴニスト/アンタゴニストの下垂体を抑制しがん細胞を抑制すること
- 抗アンドロゲン受容体を直接遮断して、がん細胞を抑制すること
この2点を治療薬として実施しております。下垂体を抑制する治療は注射薬になっておりますので、下の抗アンドロゲン受容体薬について紹介したいと思います。
内分泌療法(ホルモン療法)
男性ホルモンは精巣だけでなく、副腎からも分泌されています。抗男性ホルモン剤は、前立腺がん細胞内において、ジヒドロテストステロンがアンドロゲン受容体と結合するのを阻害することで、男性ホルモンの作用発現を抑える薬剤であり、がん細胞を縮小させる作用をもっています。
具体的には下記に記載されている薬剤が使われています。
- カソデックス(ビカルタミド)
- オダイン
- プロスタール
☆最近出た新薬
- イクスタンジ(エンザルタミド)
- ザイティガ(アビラテロン)
- アーリーダ(アパルタミド)
- ニュベクオ(ダロルタミド)
一覧で並べてみるとXXXXXタミドという名前が使われていますよね。これは先ほども紹介しました通り、アンドロゲン受容体の刺激をがん細胞は栄養にしているため、その栄養を遮断するための治療薬だから似たような名前がついております。ただとても厳密に言えばそのアンドロゲン受容体の抑え方や抑える程度が薬によって異なるため、ほぼ同じ作用機序だが違う名前なのに新薬として販売され、効果は前立腺がんの治療薬として登場します。
新薬を簡単に紹介
イクスタンジ(エンザルタミド)
- 痙攣発作を起こす可能性があります。てんかん発作の既往歴や事故による脳損傷、脳血管障害の既往(脳卒中など)がある方は、慎重投与が必要です。必ず服用している薬剤を医師・薬剤師にお伝えください。
ザイティガ(アビラテロン)
- 副腎皮質ステロイド(プレドニン)の併用が必要になります。
- 食事との影響があり、空腹時の服用が推奨されている薬剤です。食事の1時間前←←食事→→→食後2時間 この間での服用は避けましょう。
アーリーダ (アパルタミド)
- 概ねイクスタンジと同様に注意点があります
- 特徴的な副作用が皮疹です。全身に少しぷくっと膨らむような皮疹で比較的お腹や背中など柔らかいところに出現する皮疹の報告が多くなっています。対処療法で対応していきますが、ひどい場合には休薬・中止で対応します。
※私のブログの中に皮膚障害がありますが、あれは主に手足症候群についてまとめておりますので、ステロイドや保湿の部分のみ参考にしてください。
ニュベクオ(ダロルタミド)
- 薬の飲み合わせが悪いものが少ない
- 1日2回飲まないといけない薬であり、飲み忘れに注意が必要
詳細なことまで書きますと、内服適応の方が微妙に異なり、みんなが新薬すべてに挑戦できるわけではありません。
最後までご覧いただきありがとうございます。
読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。
薬剤師まさ