ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。
世界中の胃がんの約2/3 は日本や韓国、中国を含めた東アジアの国で発生していると報告されています。近年胃がん治療にも新たな選択肢が出てきており、進化する術後化学療法の治療方法について解説したいと思います。
胃がん
胃がんとは
胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序にふえていくことにより発生します。徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側(胃の細胞の中)に深く進んでいき、漿膜の外側(胃の細胞を貫通)を越えてしまうと腹膜播種(ふくまくはしゅ)になることがあります。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス
疫学
胃がんは、日本全国で一年間に約135,000人が診断されます。胃がんと診断される人は男性に多い傾向にあり、50歳ごろから増加して、80歳代でピークを迎えます。男性では最も多く、女性では乳がん、大腸がんに次いで3番目に多いがんです。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス
胃がんの原因
胃がんの発生要因としては、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染、喫煙があります。その他には、食塩・高塩分食品の摂取が、発生する危険性を高めることが報告されています。
日本の塩分摂取率は高いですが、あまり飛びに抜けてというわけではありません。かと言って、トルコ国民の胃がん発症が多いわけでもなく、喫煙やピロリ菌が原因の多くを担っているかもしれません。
胃がん治療
胃がん治療の種類
胃がんの治療法には、内視鏡治療、手術、薬物療法があります。stageによっては手術と薬物療法を組み合わせて行います。
…薬剤師なので、薬物療法ついてまとめますね。外科的な内容は、普段は見ておりますが実際の手技等は見ておらず。
胃がんの薬物療法
胃がんの薬物療法は、術後補助化学療法と手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法の2種類がございます。胃がんの病期分類をTNM分類というがん細胞の成長レベルを評価してstageを決めます。cTNMは術前に診断するclinical TNM分類とし、手術後に病理検査にて判明するpTNM(p”は”pathological(病理学的)”の略号)があります。胃がんのガイドラインでは病理分類がとありますので、p TNMがstage Ⅰであれば経過観察をしますが、stage Ⅱ以上の場合には、必ず抗がん剤が入ってきます。
術後化学療法について
p TNMにて、stage Ⅱ,Ⅲの方に対し、手術後に抗がん剤を実施することが推奨されています。
今回はこの根治を目指す術後化学療法についてまとめてみました。
治療期間は1年間だけ抗がん剤治療を実施します。現在推奨されている薬剤として
- S-1単独療法
- XELOX療法
- NEW!! DTX(ドセタキセル)+S-1療法
が推奨されています。
TS-1単独療法
基本的にはTS-1を内服する事が推奨されています。Adjuvant Chemotherapy Trial of S-1 for Gastric Cancerの頭文字を取ったACTS-GC試験が行われ、手術後にTS-1の服用にて再発率が低下と生存期間の延長するという報告がなされました。飲めてた割合は約7割程度だったにも関わらず治療効果が得られたため、推奨されています。
ただし問題点があります。stageによって再発率が異なる結果です。
ACTS-GC試験のstage毎の治療成績 | |||
stageⅡ | stageⅢa | stageⅢb | |
手術だけ | 71.2% | 57.3% | 44.1% |
手術後TS-1 | 84.2% | 67.1% | 50.6% |
そこで改善されたのがXELOX療法です。
XELOX療法
胃がん術後化学療法に対してXELOX療法は、classic試験という形で韓国が中心となり行われました。日本ver.として、j-classic試験が行われ、手術だけ群に比べ優れている結果が出ました。
興味深いのがstageⅢでの治療成績です。直接対決をしていませんので、優れているとは言い切れませんが、数字だけを見るとTS-1単独に比べ良かったことがわかりました。
その結果
- stage Ⅱ→ TS-1単独療法
- stage Ⅲ→XELOX療法
が推奨されるようになりました。
NEW!! DTX(ドセタキセル)+S-1療法
本来であれば進行・再発胃がんの2次治療で用いることがあったドセタキセル(DTX)とTS-1を組み合わせたDTX+TS-1療法のJACCRO GC-07試験が発表されました。あまりにも有効性がしっかりと示されたことで、試験が終了してしまいました(比較試験のため成績が悪い治療されている方に不利益が生じないため)。stageⅢでも大きく治療成績が落ちることがなく治療できたことから、今後のガイドライン改定で標準化される可能性があります。
まとめ
今年の国臨床腫瘍学会年次集会(2019 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®)の報告から、また1つガイドラインが進化しそうな予感がします。まだ実臨床レベルで徐々に変わる気がしますが、今後以下のような推奨に変わるかもしれません
ゼローダの副作用はとても多く、特に手足症候群が出現するなど生活に大きな影響を与えてしまう副作用が存在します。治療成績だけでなく生活の質を考えてた場合、ドセタキセル₊TS-1になるのではないか?とかってに考えております。
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抗がん剤の手足症候群を含む皮膚障害についてまとめた記事です。
手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法についてはまた今度まとめてみたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございます。
読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。
薬剤師まさ