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抗がん剤による皮膚への影響

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

抗がん剤治療にて、悩まされるのが皮膚のトラブルです。特定の薬剤が原因で引き起こされる副作用の一種になりますが、皮膚トラブルは日頃のケアが重要になってくる副作用です。

私も日々の服薬指導の中で、治療開始時の説明が届いておらず、皮膚状態がひどいことになっている方を何人も見ています。ひどくなってからいい状態にするのはとても長く、患者さん自身もつらい状態が続いてしまいます。完全予防とまでは厳しいですが、軽減させることは確実にできます。ぜひご一読していただき、実践していただけると幸いです。


皮膚障害ってどんな症状がでるの?
色々な症状がでますよ。皮膚が黒くなる方やボロボロになる方、ボツボツが増えてくる方など、薬の種類によって大きく異なります。

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抗がん剤による皮膚障害

皮膚障害とは

抗がん剤によって、皮膚の色素沈着・皮膚の乾燥(乾燥性皮膚炎)・手足の皮膚に発赤や腫脹の出現・指先や爪の硬化や黒ずみ、ひび割れなどといった症状が起こることがあります。いずれも抗がん剤の作用により、皮膚表皮の細胞に反応してしまうことで、新陳代謝が抑えられるのが原因と考えられています。その中でも手足症候群ざ瘡様皮疹は、日々の生活に大きな影響を与える可能性がある副作用でありながら、上手に対策を行えば軽減することができる副作用になっています。

手足症候群

「手足症候群」とは、抗がん剤によって手や足の皮膚の細胞が障害されることで起こる副作用とされております。 具体的な症状として、手足症候群は服用開始1~2週間が最も出やすく手のひらや足の裏が痛くなったり、赤くなったリ、ときに水ぶくれができたりします


ざ瘡様皮疹

アクネ菌が関与するニキビとは違い、薬によるざ瘡様皮疹はアクネ菌など菌に影響しないの皮疹です。顔面、頭部、背中、胸部などに黄白色のぽつっと膨らんだ皮疹が投与1週間後くらいから無数に出現します。無症状の症例が多いですが、掻痒または疼痛を訴える場合もあります。軽症の場合は、粉をふいたような落屑と赤くなっているだけの皮膚炎に類似した症状を呈します。


皮膚障害が起こりやすい薬

手足症候群が起こりやすい一覧

商品名 一般名 癌腫 剤形
5-FU フルオロウラシル 大腸がん等 注射
キロサイド シタラビン 血液がん 注射
ドセタキセル ドセタキセル 乳がん・肺がん等 注射
ゼローダ カペシタビン 胃がん・乳がん等 内服
TS-1 ティーエスワン 胃がん・膵がん等 内服
ネクサバール ソラフェニブ 肝臓がん等 内服
スーテント スニチニブ 腎臓がん等 内服
スチバーガ レゴラフェニブ 大腸がん等 内服
レンビマ レンバチニブ 甲状腺がん・肝がん等 内服

※正確にお伝えすると、手足症候群と記載されておりますが、すべてが同じではございません。▲▲▲ニブは、圧がかかりやすい場所(足の裏など)に出現しやすく、疼痛がほぼ伴います。

ざ瘡様皮疹が起こりやすい一覧

商品名 一般名 癌腫 剤形
アービタックス セツキシマブ 頭頸部がん等 注射
ベクティビックス パニツムマブ 大腸がん等 注射
イレッサ ゲフィチニブ

肺がん

内服
タルセバ エルロチニブ 肺がん 内服
ジオトリフ アファチニブ 肺がん 内服
タイケルブ ラパチニブ 肺がん 内服

皮膚障害の発症時期と特徴

手足症候群の出現時期と特徴

手のひら・足の裏にチクチクまたはピリピリするような感覚の異常が出現し、見た目の変化を伴わない【注意が必要レベル(Grade1)】。さらに重篤化すると皮膚変化は比較的全体的にの発赤(紅斑)で、進行すると皮膚表面に光沢が生じ、指紋が消失する傾向がある【抗がん剤を減らす・一回お休みすることを考えるレベル(Grade2)】。さらに重篤化すると次第に疼痛が出現する【お休みをして、症状回復を待つ(Grade3)】。症状に応じた対応をしていくことが必要です。

発現のピークは服用開始から1〜2週間ですが、2ヵ月間は特に注意が必要です。手のひら、足の裏にはしっかりと注意して観察してください。皮が突っ張ってきていたり、テカテカしてくるとひどくなってくる予兆です。皮膚の変化は必ず医療従事者と確認をして、治療していきましょう。

ざ瘡様皮疹の出現時期と特徴

ざ瘡様皮疹の発現のピークは治療開始1週間後ぐらいから出現します。その後、皮疹は落ち着いてきますが、今度は皮膚乾燥が出現してきます。皮膚乾燥は約3~5週間程度の頃に出現すると言われております。乾燥した部分は特に亀裂が生まれやすく、投与後4~8週程度から爪の横の皮膚が割れてしまう爪囲炎が発現し、6ヵ月頃までみられる。

ざ瘡様皮疹→皮膚乾燥→爪囲炎という流れはセットで起こります。抗がん剤の量を減らすことで、副作用を軽減することができます。一方でざ瘡様皮疹が沢山出現する場合、治療効果の良いかもしれないという報告が存在します。副作用をマネジメントしながらがん細胞をやっつけることが求められています。

皮膚障害への予防と治療

断言します。予防が大事です。
とにかく予防です。

生活における予防

手のひらや足の裏への圧力や摩擦、乾燥などといった皮膚への刺激が、発症のきっかけになると考えられています。

どんな生活で起こりやすいのかまとめてみました。

  • 日光に当たり続ける生活
  • かかとの高いヒールでの生活
  • 革靴での営業
  • 手を使う仕事(料理人など)
  • 水を扱う作業(洗い物)
  • ランニング(ウォーキング)
  • ゴルフ・テニスなど握る道具を使用するもの

これらをすべて避けましょう。と言いにくい部分がございます(中にはお話しされる薬剤師や医師もいると思います。)私は患者さんがなぜ頑張って治療しているのかと考えたときに、一日でも長く楽しく生活したいからであり、生きがいはそれぞれが違います。我々医療従事者の教科書的な服薬指導は、時に生活の楽しみを奪ってしまうことになります。

手足症候群が起こりやすい治療をされている方で、このような生活スタイルに該当する方は、注意する必要があります。必ず小さな変化でも医療従事者に伝えてください。

薬物治療における予防

薬物治療における予防、それは保湿です。とにかく保湿です。

上では予防が大事だとお話ししましたが、それが保湿に変わっただけではないかと言われます。ですが、保湿が大事です。

なぜ保湿が重要かと申しますと、皮膚へのダメージが加わることで水分の保持能力が失われ、亀裂や乾燥・疼痛へと発展していきます。それらを軽減するためには人工的に保湿剤を使用しながら水分を守る必要があります。
保湿は処方される薬でなくてもOKです。市販の保湿剤にはたくさんいい成分が含まれておりますので、なんでも構いません。ですが、保湿剤に欠かせない尿素が含まれている場合、乾燥が強い部分に塗布した際にしみる可能性がございます。もし痛みがある場合は尿素抜きの保湿剤を選びください。またお風呂後が最も保湿効果があります。入浴後には必ず保湿をしましょう。

薬物治療における治療

どんなに予防を行っていても皮膚障害は出現してきます。予防でもコントロールできない場合には、炎症を抑えるためにステロイドを塗ります。

ステロイドは炎症を抑えますが、副作用も出現する難しいお薬です。悪いイメージが先行しておりますが、上手に使えばとてもいい薬です。安全に使用するために次の大原則をお守りください。

  • 症状が落ち着いたらもう使わない
  • 問題ない皮膚には塗らず、炎症がある部分にだけ使う
  • 顔には強いステロイドを塗らない
これらをお守りください。長期的に症状がないところに塗り続けますと、皮膚が薄くなり色素沈着が起こります(皮膚が黒くなります)。さらに弱くなり、乾燥が強くなったり、治りが悪くなったりします。注意しましょう!また顔はステロイドの吸収がとても良いです。弱いステロイドでも十分効果を発揮しますので、医師や薬剤師が塗る場所の指定をしている場合は、守りましょう

患者さんからよくある質問と回答

皮膚障害対策に日焼け止めを使ってと言われましたが、どんなタイプがいいの?
日焼け止めには多くの種類があり、強力なものが多く販売されてきています。SPFは、サンプロテクションファクター(Sun Protection Factor)の略で、主に紫外線の防止効果を表す目安の数値です。SPFは1あたり20分の日焼け止めの効果を持ちます。なのでSPF:50は1000分間の日焼け止め効果=16.67時間です。そんなに太陽出てないですよね…。強すぎるのも刺激になりますので、SPF:30=10時間のもので十分です。皮膚に優しい日焼け止めを選びましょう。

爪の横が亀裂が入って痛い。ステロイドの塗り薬使っても痛みが変わらない。
爪と皮膚が接しているだけでも刺激になり、亀裂の回復が遅くなることがあります。亀裂部分と爪を引き離すようにテープを張ってみてください。

保湿しろって言われても普段しないからどのくらいの量をしたらいいかわからない
軟膏製剤の場合、人差し指の第一関節までの量で手のひら2枚分の範囲となっております。ローションのような液体製剤の場合は1円玉分が同等量となっております。女性の方は塗りなれておりますが、男性の場合塗りなれていないことが多いです。突然見たことない小さな一円玉分の量しか塗らないでいることがあります。医療従事者、ご家族の方みんなでCheckしましょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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