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【解説】がん治療における末梢神経障害治療薬の使い方と副作用

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

がん治療における末梢神経障害:痺れは、誘発される薬剤を使用する場合、なかなか改善や劇的な症状緩和は見込めず、どううまく付き合っていくかがポイントになってきます。ただ末梢神経障害の改善を期待して内服薬もいくつかあり、上手な使い方と注意したい副作用について紹介したいと思います。

痺れって治らないの?どんな感じで出てくるの?
抗がん剤を止めると治るかもしれませんね。でも皆さん残っていることが多いです。特に指先や足の裏に、長期間続けている方だとその範囲が拡大している印象があります。

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末梢神経障害

末梢神経障害とは

末梢神経障害とは、基本的には指先・足の裏に拡がる痺れであり、抗がん剤の投与が続いてくると出現してくる副作用の1つです。すべての薬が発症するわけではなく特定の抗がん剤を使用している方になります。

薬剤師まさブログ

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。 抗がん剤の治療によって【痺れ:しびれ】が出現することをご存知でしょうか。抗がん剤の種類によって痺れが出現することがあります。それを「末梢神経障害」と表現します。医療用語でもっと正確に表現す[…]

以前、末梢神経障害についてまとめた記事になっております。今回は治療薬について解説したいと思います。

抗がん剤による末梢神経障害

抗がん剤による末梢神経障害は、主に感覚神経、運動神経、自律神経障害に分類される。痺れの程度を数値化することが難しく、感覚的な表現でしか表せないのも改善につながりにくいものがある。

神経線維は触覚・圧・振動を伝えるAβ繊維と痛みや冷感・温感を伝えるAδ線維、鋭い痛みを伝えるのはC線維と言われており、痛みはAδ・C線維・痺れはAβと言われているが、明確な線引きは難しいところである。


末梢神経障害治療薬

解説にあたり、正直なところ確実に改善できる治療薬が存在しません。そのため、この薬剤が推奨度が高いものというのが明確にすることができていません。事実、ガイドライン等においても推奨度が高い薬剤がございません。軽減できる可能性がある薬剤として読んでいただければと思います。

リリカ(一般名:プレガバリン)

【薬剤について】帯状疱疹後神経痛・糖尿病性末梢神経障害に伴う疼痛に有用性が示されている

【がん治療に伴う末梢神経障害】リリカの効果をみた報告は存在せず、ケース報告が大多数である。第一選択として用いられることもあるが、治療効果として期待できる効果を示すエビデンスがないところである。

【使用に伴う注意点】添付文書には「成人には初期用量としてプレガバリン1日150mgを1日2回に分けて経口投与し、その後1週間以上かけて1日用量として300mgまで漸増する」と記載がある。ただ、ふらつきや眠気が強い薬剤のため高齢な患者さんには注意が必要である。私の感覚ではありますが、50mgから始め徐々に増量という形でゆっくりと増やしていくとふらつきや眠気に困る方が少ない印象がある。


サインバルタ (一般名: デュロキセチン塩酸塩 )

【薬剤について】うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛と、抗うつ薬でもある薬剤です。

【がん治療に伴う末梢神経障害】大規模な臨床試験が行われており、ある程度の治療成績が見込まれております。パクリタキセルやボルテゾミブ、ビンクリスチン、オキサリプラチンと一般的に末梢神経障害が誘発される薬剤全般的に含まれた患者群を対象とした報告があり、現在の治療薬の中で最も有用性が高い可能性があります。

【使用に伴う注意点】サインバルタは相互作用が多い薬剤であり、特にワルファリンを併用している方には注意が必要である。私は必ずINRのフォローを医師に依頼をし、出血傾向には注意深くモニタリングするよう服薬指導には入れております。消化器症状が多い薬剤であり、いきなり40㎎から始めると吐き気が出現することがあります。20㎎を1週間程度服用してから徐々に増量することで、悪心の出現が回避できる印象があります


ビタミンB12

【薬剤について】末梢神経障害に対し保険適応があるため処方されていることが多い

【がん治療に伴う末梢神経障害】ビタミンB12製剤の有用性を示す報告はされていない。むしろ、サインバルタ(デュロキセチン)や牛車腎気丸の有用性を示すための対象群として扱われており、それよりも治療効果が劣ると言われております。

【使用に伴う注意点】特にございません。


非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)

【薬剤について】一般的に鎮痛作用を期待して使用されている

【がん治療に伴う末梢神経障害】末梢神経障害に対して検討した報告がなく、ケースレポートも報告されていないのが現状である。疼痛を伴った末梢神経障害に対して処方されていることが多いかもしれないが、治療効果は限定的である可能性が考えられる。

【使用に伴う注意点】一般的に使用するNSAIDsと同様に腎障害・粘膜障害に注意する必要がある


オピオイド

【薬剤について】一般的に鎮痛作用を期待して使用されている

【がん治療に伴う末梢神経障害】末梢神経障害に対して検討した報告あるものの少なく、信頼性が低い検討内容である。疼痛を伴った末梢神経障害に対して処方されていることが多いかもしれないが、治療効果は限定的である可能性が考えられる。

【使用に伴う注意点】一般的に使用するオピオイドと同様に眠気・消化器症状・呼吸抑制に注意する必要がある


漢方薬

【薬剤について】下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみに対して使用される

【がん治療に伴う末梢神経障害】牛車腎気丸の使用は、大規模に検討した報告例があり、主にオキサリプラチンを対象とした臨床試験があります。残念なことにプラセボと比較試験を行い、牛車腎気丸を服用していた群の方が末梢神経障害の発症が有意に増加し、効果安全性評価委員会から試験中止になった例があります。また効果が出ている報告例では検討症例数が少ないことや効果が期待できると結論付けていても統計学的には有意でない現状がある。ガイドラインにも牛車腎気丸の有用性は否定的な形になっており、末梢神経障害の予防・軽減は期待できないと考える

【使用に伴う注意点】特になし


がん治療に伴う末梢神経障害対策

抗がん剤自体の減量・中止について

抗がん剤自体の末梢神経障害が増悪した場合、被疑薬(白金製剤・タキサン系・ビンクリスチン(オンコビン)・ボルテゾミブ(ベルケイド))などを継続するよりも減量・中止した方が副作用軽減になることが予想される。いずれの薬剤も用量依存性があり、投与回数が多いと末梢神経障害が出現するとされている。ただし、末梢神経障害が原因で用量を低下させても治療効果が担保される報告例が、オキサリプラチン以外の抗がん剤ではなく、抗腫瘍効果の減弱の可能性があることからも医師としっかりと相談が必要である。


オキサリプラチンの末梢神経障害と減薬

オキサリプラチンを使用するFOLFOX療法で検討された臨床試験である。末梢神経障害が出現した場合、オキサリプラチンを末梢神経障害が出現した場合には中止し、改善してから再開とするstop & go strategyで治療効果(再発までの期間と生存期間)が変わらないという報告があります(OPTIMOX-1試験)。


安易な減量は注意する必要もある

オキサリプラチンの減量についても注意していただきたいのが、StageⅣの患者さんを対象としており、術後化学療法の患者さんは対象としておりません。術後化学療法の治療効果低下では、再発率の低下が期待できなくなってしまうこと、また血液疾患における治療効果低下は寛解率を低下させることから、同様に考えてはいけない点もあります。ただ生活の質(QOL)を低下させてまで治療を行う点には疑問があり、メリットとデメリットを検討しながた治療を継続する必要があると考えられる。


最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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