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肺がん治療は近年治療方法が劇的に変化しており、その中でも遺伝子変異に合わせた抗がん剤治療の発展がとても著しいです。今回その肺がん治療の中でも特に遺伝子変異に伴う抗がん剤治療薬(内服編)についてまとめてみました。

今回は、EGFR遺伝子の変異している時にしか使うことのできない経口抗がん剤について解説したいと思います。

遺伝子検査して抗がん剤の投与するか決めるの?ってことは生まれながらにして、抗がん剤ができるかできないかが決まるの?
そういうわけではありません。この遺伝子は基本的には細胞を成長させるためには欠かせない遺伝子になりますが、変異することでコントロール不良となり細胞を作り続けてしまう。それががん細胞で起こってしまうという作用になっています。なのでがん細胞の遺伝子が変異しているかどうかが問題なので生まれながらにして治療の選択肢がなくなるわけではありません。

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切除不能肺がん治療(StageⅣ)

治療のフローチャート

肺がん治療はまずがん細胞がどんな形をしているのかに分けて考えていきます。その分け方が大きく分けて二つ

扁平上皮癌か扁平上皮癌がじゃない(非扁平上皮癌)か

非扁平上皮癌は、腺がんもしくは大細胞がんを指します。一般的には腺がんの方が多いかと思います。今回はEGFR遺伝子異常の治療薬についてお話ししますので、

非小細胞肺がん非扁平上皮癌(腺がん)StageⅣと診断された方で、EGFR遺伝子が変異を起こしている方

の治療方法について解説していきたいと思います。すでに個別治療感が凄い細分化かと思いますが、さらに言えばEGFR遺伝子にも数種類存在し、その変異の仕方によって治療選択を検討することもありますが、そこは先生方の治療方針決定にお任せし、どう上手に副作用回避しながら安全に治療できるか突き進んでいきたいと思います。…ので紹介しません。


肺がん治療における経口抗がん剤のポジション

このようなフローチャートをしております。ECOG PSというのは簡単に言うと

どれだけ元気かを表す指標(0:元気 4:寝たきり)

となっております。

ご覧の通り元気ではない方は治療選択が少なくなりますので、「今元気だから抗がん剤は絶対にしない」→「もう辛くて…やっぱり抗がん剤治療してください」はそもそも抗がん剤治療の適応ではない状態になってしまうことがあります。これは見捨てているわけではなく、抗がん剤治療以外の方法で辛さを取っていく形になっていきます。

ではこの中に記載されているEGFR-TKI(Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitors:上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)について解説していきたいと思います。

どんな遺伝子異常が存在するのか

EGFR以外にも色々な遺伝子異常が存在します。ROS1 融合遺伝子やALK融合遺伝子、MET遺伝子、RET遺伝子、BRAF遺伝子など様々な遺伝子変異が存在し、それに対して治療薬が存在するものが増えてきました。今書いた遺伝子に変異が起こる場合には、がん細胞の成長を促してしまうため、「ドライバー遺伝子」と表現されることがあります。


EGFR変異があった場合に使用する治療薬の作用機序

EGFR-TKI(Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitors:上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)を使用すると書きましたが、このEGFRはどのような働きをしているのかについて解説します。

本来細胞の成長にはEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)に指令が到達することで、細胞を成長させるよう働きます。ただEGFR遺伝子が変異した場合、指令がないのにも関わらず細胞を成長させるように永遠に働き続けてしまいます。

細胞を作るためにはエネルギーが必要になります。そのエネルギーはATPと呼ばれており、そのATPとEGFRが結合し、指令を受け取って初めて細胞を増殖させることができます。では指令を受け取らなくて作り続けてしまっていた場合、どうしたら止めることができるのか。それはATPとEGFRが結合しなければ作ることができませんよね?なのでEGFR-TKI(Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitors:上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)を使ってATPとの結合を止めてあげることで、がん細胞を増やさないようにする治療薬になっております。


経口抗がん剤治療薬について

EGFR遺伝子変異治療の経口抗がん剤

EGFR-TKI(Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitors:上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)には4種類の経口抗がん剤が存在します。

  • イレッサ(ゲフィチニブ)
  • タルセバ(エルロチニブ)
  • ジオトリフ(アファチニブ)
  • タグリッソ(オシメルチニブ)

どれから使うか。決まっていません。各治療成績は個々に存在しておりますが、直接対決をしていないので、一概にもこれから使うべきというのは定まっていません。


副作用の注意点

採血でわかる副作用と注意点

骨髄抑制

白血球や赤血球・血小板など血液の成分が全体的に低下することを骨髄抑制といいます。輸血に頼ることはあまりありませんので、貧血が強すぎてふらふら・血が止まらないぐらい血小板が低いということは基本的にはありません。治療をしていると治療する前に比べて低くなることはありえます。普段風邪をひかないでいるのも体の中に入ってきたばい菌を白血球がやっつけてくれるから風邪をひかずに済んでいるですね。病院もきれいなところではありません。病室にいても日頃の手洗いうがいを行い感染症にならないよう注意する必要があります。


身体で感じる副作用

皮疹

皮疹とってもニキビのようなものができるざ瘡様皮疹が出現することが多いです。ひどくならないように予防することが大切です。ざ瘡様皮疹の発現のピークは治療開始1週間後ぐらいから出現します。その後、皮疹は落ち着いてきますが、今度は皮膚乾燥が出現してきます。皮膚乾燥は約3~5週間程度の頃に出現すると言われております。乾燥した部分は特に亀裂が生まれやすく、投与後4~8週程度から爪の横の皮膚が割れてしまう爪囲炎が発現し、6ヵ月頃までみられる。

ざ瘡様皮疹→皮膚乾燥→爪囲炎という流れはセットで起こります。抗がん剤の量を減らすことで、副作用を軽減することができます。一方でざ瘡様皮疹が沢山出現する場合、治療効果の良いかもしれないという報告が存在します。副作用をマネジメントしながらがん細胞をやっつけることが求められています。

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下痢

もし起こってしまったらミネラルの入った(ポカリ,OS-1,アクエリアスetc.)水分を摂取すること。とにかく下痢で出た分飲むぐらいしっかりと水分摂取をし、下痢→脱水を回避しましょう。ひどい場合には薬でコントロールできます。医療従事者に必ずご相談ください。

水様便が出るから水分我慢は絶対にダメです。脱水で倒れます。
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倦怠感

どことなくかったるいという症状が出ることがあります。お薬を服用することによって生じますがこの薬剤たちは休薬期間がありません。必ず毎日飲まないといけない薬剤になっておりますので、お休みしないように工夫していく必要があります。ぜひ、勝手にお休みせず医療従事者にご相談下さい。運動や漢方など上手に使いながら軽減する方法があります。

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それ以外にも

  • 肺障害
  • 口内炎

などなどありますが、普段と何だか違うな…。と感じる時には、病院に連絡することが大切です。

必ず連絡が欲しい副作用

絶対に連絡が欲しい副作用として、発熱です。白血球が少ないときに起こる発熱や薬剤によって肺炎になってしまうような場合には非常に危険です。発熱性好中球減少症や間質性肺炎と言われる危険な副作用の1つになりますので、必ずご連絡ください。ほかにも普段と異なるし、とても辛いということがあればすぐにご連絡ください。我慢は禁物ですよ。

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ご家族の方に影響はありません

普段通りの生活で構いません。孫と遊びたい。一緒に食事したい。とお孫さんへの影響を考えて孤立してしまう方を何人も見てきました。心配ありません‼抗がん剤服用後48時間は避けるようにと記載があったりしますが、基本的にそのような根拠がありません。

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読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

薬剤師まさ

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