ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。
今私自身がホットであると同時にどうしたらいいのか悩んでいる問題を書きたいと思います。タイトルにもあります通り、AYA世代のがん治療です。AYA?なんだそれという方もいると思いますが、これを見て知っていただけると嬉しいです。
AYA世代
AYA世代とは
思春期と若年成人
思春期(Adolescents) は就学期。
- 精神的・社会的自立に向けた発達段階。就労前で経済的自立ができていない。意思決定の主体は親になりがち。性的にも発達途上。
若年成人(Young adults) 就労期。
- 精神的・経済的に自立し始める。意思決定は本人であり、次世代を生み育て、社会を支える。
同じ年齢であっても、自立の度合い、就学・就労・経済的状況、家庭環境により、ライフプランには個人差があるため、具体的な対応を考える際にはオーダーメイドで対応することが望ましいと考える。
AYA世代のがん患者の実態
2009-2011年の小児がん(0~14歳)の罹患率(粗罹患率)は12.3(人口10万人あたり)と報告されています。AYA世代にかけてのがん罹患率は15~19歳で14.2、20歳代で31.1、30歳代で91.1(人口10万人あたり)。これらの罹患率を日本全体の人口に当てはめると、1年間にがんと診断されるがんの数は小児(0~14歳)で約2,100例、15~19歳で約900例、20歳代で約4,200例、30歳代で約16,300例と推計される。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
0~14歳 (小児) |
白血病 [38%] |
脳腫瘍 [16%] |
リンパ腫 [9%] |
胚細胞腫瘍・ 性腺腫瘍 [8%] |
神経芽腫 [7%] |
15~19歳 | 白血病 [24%] |
胚細胞腫瘍・ 性腺腫瘍 [17%] |
リンパ腫 [13%] |
脳腫瘍 [10%] |
骨腫瘍 [9%] |
20~29歳 | 胚細胞腫瘍・ 性腺腫瘍 [16%] |
甲状腺がん [12%] |
白血病 [11%] |
リンパ腫 [10%] |
子宮頸がん [9%] |
30~39歳 | 女性乳がん [22%] |
子宮頸がん [13%] |
胚細胞腫瘍・ 性腺腫瘍 [8%] |
甲状腺がん [8%] |
大腸がん [8%] |
【参考文献】がん情報サービス より
10歳代では血液関連の疾患が多いが、20歳~30歳代にかけて乳がん、子宮頸がん、甲状腺がんが増えてきており、AYA世代ではその変化が大きいことがわかる。
AYA世代の抱える問題点
現在、AYA世代を支援するために研究班が立ち上がり、AYA世代がん患者およびAYA世代がん経験者の悩みとして、「治療中」「経験してから現在」と2つの時期を調査した報告がある。
≪治療中≫
順位 | 項目 |
1 | 今後の自分の将来のこと |
2 | 仕事のこと |
3 | 経済的なこと |
4 | 診断・治療のこと |
5 | 不妊治療や生殖機能に関する問題(将来、自分の子どもを持つこと) |
≪経験してから現在≫
順位 | 項目 |
1 | 今後の自分の将来のこと |
2 | 不妊治療や生殖機能に関する問題 (将来、自分の子どもを持つこと) |
3 | 仕事のこと |
4 | 後遺症・合併症のこと |
5 | 体力の維持、または運動すること |
今後の自分自身の将来に関して、悩みは改善されておらず、妊孕性・仕事と自身のライフプランに対する不安は治療後も改善されていない状況が続いていることがわかります。やはり、医療従事者だけでは対処することができない領域にはありますが、社会が一丸となって支えていくようにしなければならない問題ではないかと思います。
AYA世代のがん治療と生活
がん治療と現状
AYA世代のがん患者は一定の割合で存在しているが、各医療施設での治療経験が乏しく、成人がん患者に比べ満足のいく対応がされていない可能性が考えられる。またAYA世代のがん治療においても大きな問題が挙げられる。
- AYA世代のがん患者の生物学的特徴がわからない
- 臨床試験が少なくどの治療がベストかわからない
- 若年成人になるとアドヒアランスの低下による治療効果低下がある
- 晩期毒性のためのフォローアップが必要になるが、本人は何ともないと感じてしまうと通院が途絶えることがある
- などなど
様々な理由が報告されております。
AYA世代特有の問題
AYA世代への調査によって、様々な問題点が挙げられています。
- 相談支援の環整備
- 治療開始から始める緩和ケア
- 思春期世代への教育支援
- 若年成人に対する就労支援
- 妊孕性温存と環境整備
- AYA世代がん患者に対応できる診療体制と療養環境
- などなど
これらが一施設で完結できるように、また地域で・多施設で共同しながら対応できるような環境を作っていかなければならないと思います。
AYA世代特有の病態の進行と治療開始時期
すべてのAYA世代がん患者に当てはまる部分ではありませんが、血液疾患の場合には急いで治療することが望ましいと思います。経験者の方でも、気づいたら治療が始まっていた方もいらっしゃると思います。
「あなた急性骨髄性白血病です」と診断されてからは、多くの不安があるにもかかわらず、「半年間は治療が続きます」「同種移植を検討しています」「まずはこの病気を治しましょう」と立て続けに話がなされ、入院・抗がん剤治療・治療日・治療期間・治療やる前提での副作用の話・検査…と考える余裕がありません。
薬剤師として何ができるのか
AYA世代に対するチーム医療での薬剤師の立ち位置
私の現在の課題はこれです。薬剤師がAYA患者へ何がサポートすることができるのか。抗がん剤治療による性腺の影響について検討し、情報をチームで共有・AYA世代がん患者へ適切な情報を届けるのが大事だと思います。
妊孕性温存には非常に多額の費用がかかります。ですが、抗がん剤の種類によっては性腺への影響はあまりないのではないかとされているものや、実際の出産成功例の報告などあります。あくまでも絶対的な数字が提供できる内容ではありませんが、個々によって価値観が異なるものであり、治療開始する前の最も選択肢が多いタイミングでの早期的な介入が望まれるのでないかと考えています。
現実は厳しい状況
私は患者会に参加したときに、衝撃的な事実を聞きました。妊孕性の消失がわかっている抗がん剤治療を実施する前に妊孕性消失についての情報提供がなされておらず、寛解した後に知ったという話。夫婦は突然、描いていたライフプランが崩れてしまったという話を聞きました。
ブログを覗いていても、しっかりと妊孕性温存の情報提供を受けてから治療開始したAYA世代がん患者・治療中に知らされたAYA世代がん患者・妊孕性が消失する可能性が高いにも関わらず、治療終了後の挙児希望について話されいる方がいらっしゃいました。見て見ぬふりというのは、最低化もしれませんが、信頼感が得られていない状態ではさすがに動けません。とても悔しいですが、このような「知らなかった」を0にしなければならないと思っています。「知らなかった」ではなく「その事実を知っていた。でも命を優先した」という選択をできるよう早期に情報提供する必要があると思っています。
今は理想論かもしれませんが、これを常識に変えていかないといけないと思います。私も頑張らないといけないですね。
最後までご覧いただきありがとうございます。
読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。
薬剤師まさ