ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。
大腸がん術後には抗がん剤治療を実施し、腫瘍細胞の根っこまで取り除き再発率を低下させる治療があります。アジュバント(adjuvant)と呼ばれている術後化学療法についてご紹介します。
大腸がん
大腸がんとは
大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。
大腸にポリープがあったら必ず切り取るのは、この良性のポリープが癌化することがわかっているからなんです!
大腸がんと新たに診断される人は、1年間に10万人あたり103人です。年齢別にみた罹患率は、40歳代から増加し始め、50歳代で加速され、高齢になるほど高くなります。罹患率の男女比は、男性では1年間に10万人あたり121人、女性では86.4人とやや男性に多い傾向にあります。男性では胃がん、肺がんに次いで3番目、女性では乳がんに次いで2番目に多いがんです
参考:国立がん研究センターがん情報サービス
治療方針
治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。とてもざっくりとした表現になってしまいますが、がんの深さが粘膜および粘膜下層にとどまるものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」といいます。早期がんは手術を行い、原則抗がん剤治療を実施するため術後化学療法という名前の治療方針が定まります。
治療成績
今回は術後化学療法のみ抜粋をしてお話ししたいと思います。現在、大腸がん術後化学療法について、国内の臨床試験は最新のJFMC47-1202:ACHIEVE試験を含む6つの臨床試験が実施されております。6つの試験の統合解析の結果、3年間の再発しない割合は75.5%と約3/4の方では再発しないという結果が出ています。
原則半年間の治療(XELOXは8コース、FOLFOXは12コース)が推奨されていますが、再発低リスクの方は3ヶ月でもいいのではないか?となっているのが現在の最新治療です。ですが、圧倒的に報告数が多い半年間の術後化学療法が現在の推奨度は高いです。
術後化学療法の治療の目的と期待される効果
手術によって根治に近い状況を作っておりますが、再発をしてしまっているのが現状です。そのため再発の頻度を下げるため、術後化学療法を実施しております。基本的な対象はStageⅡの再発リスクが高い方とStageⅢの方となっております。
大腸がんは他のがんと異なる点として、大腸がんが肝臓・肺に転移していた場合、転移しておりますがその部分を切除後、術後化学療法を行うという点です。原則転移例はStageⅣ(切除不能進行がん)として他のがんでは扱われますが、大腸がんだけは積極的な手術を実施します。
術後化学療法(XELOX or FOLFOX)
XELOXについて
XELOX療法はゼローダ(カペシタビン)の飲み薬とエルプラット(オキサリプラチン)の点滴が組み合わせた治療になっています。
カペシタビン2000mg/m2 分2 1〜14日目(1日目の夕から15日目の朝まで)
エルプラット130mg/m2 1日目(2時間かけて投与)
これを3週間1セットとして治療していきます。
XELOXの副作用
特徴的で代表的な副作用として、悪心、末梢神経障害(痺れ),手足症候群,投与部位の血管痛等が挙げられます。以下の副作用がすべてではございませんが、一部記載しております。
XELOX療法 day1-day7までに起こりそうな副作用
エルプラット(オキサリプラチン)の投与後、手・足・口腔内や口の周りに違和感・痺れが出現したりすることがあります。特に発症する要因として、冷気や冷えた飲料に触れたり飲水することで、症状が出現します。数日で改善してくると言われていますが、極力回避することが必要です。
副作用対策として吐き気止めは使っております。ですが、まれに出現してしまうことがあります。万が一吐いてしまった場合、2回目の治療では更なる強化をして準備しますのでご安心を。トイレでゲーゲーしているイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は吐き気止めも進化しております。また吐き気や嘔吐が出た場合にも使える薬が沢山あります。我慢せず教えてください。
これはday3.4に出てくることがあります。改善することがなかなか難しく時間が解決してくれるのを待つこともしばしば。デカドロンの服用を数日延ばしてあげると倦怠感の改善につながることもあり、相談してほしい副作用の1つです。
粘膜障害の一種である口内炎ですが、抗がん剤の直接的なダメージによって傷がついてしまう状態です。こちらもお尻同様に感染源になることがありますので、必死にうがいをしていただけたらと思います。
XELOX療法 day8-day14までに起こりそうな副作用
家で引きこもり状態になる方もいらっしゃいますが、そこまで厳重でなくても構いません。普段通りの生活で、家に戻ってきたら手洗いうがいをお願い致します。
XELOX療法の治療薬の1つであるゼローダ(エルプラット)による副作用である手足症候群が出現する時期になっております。大切なのはとにかく保湿です。夏でも手袋をして寝るくらい保湿をしていただきたいです。それでも痛みや赤くなるなど症状が出てしまった場合には、ステロイドで対処療法を行い疼痛軽減に努めます。必ず我慢せず手と足の状況を医療従事者と確認してください。
詳細はリンクにあります。ご参考にしていただけると幸いです。
mFOLFOX6について
参考文献:消化器癌治療の広場
すべて点滴で治療を行います。外来での46時間点滴は困難であるため、ポートと呼ばれる、点滴を安全に持続点滴できる医療機器を体内に埋め込み治療を行います。
エルプラット 85mg/m2 1日目(2時間かけて投与)
5-FU 急速静注400mg/m2 1日目(50㏄の溶解液なら5分程度)
5-FU 持続静注2400mg/m2 1-2日目
レボホリナート200mg/m2 1日目(2時間かけて投与)※エルプラットと同時投与です
これを2週間1セットとして治療していきます。
mFOLFOX6の副作用
特徴的で代表的な副作用として、末梢神経障害(痺れ),好中球現象等が挙げられます。
mFOLFOX6 day1-day7までに起こりそうな副作用
エルプラット(オキサリプラチン)の投与後、手・足・口腔内や口の周りに違和感・痺れが出現したりすることがあります。特に発症する要因として、冷気や冷えた飲料に触れたり飲水することで、症状が出現します。数日で改善してくると言われていますが、極力回避することが必要です。
副作用対策として吐き気止めは使っております。ですが、まれに出現してしまうことがあります。万が一吐いてしまった場合、2回目の治療では更なる強化をして準備しますのでご安心を。トイレでゲーゲーしているイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は吐き気止めも進化しております。また吐き気や嘔吐が出た場合にも使える薬が沢山あります。我慢せず教えてください。
これはday3.4に出てくることがあります。改善することがなかなか難しく時間が解決してくれるのを待つこともしばしば。デカドロンの服用を数日延ばしてあげると倦怠感の改善につながることもあり、相談してほしい副作用の1つです。
粘膜障害の一種である口内炎ですが、抗がん剤の直接的なダメージによって傷がついてしまう状態です。こちらもお尻同様に感染源になることがありますので、必死にうがいをしていただけたらと思います。
mFOLFOX6 day8-day14までに起こりそうな副作用
家で引きこもり状態になる方もいらっしゃいますが、そこまで厳重でなくても構いません。普段通りの生活で、家に戻ってきたら手洗いうがいをお願い致します。ただし治療が延期になるくらい血球が下がる方もいらっしゃいます。全部減量される方もいらっしゃいますが、5分で投与終了する5-FUを無くしてあげるだけで血球減少を抑えることができます。5-FUの投与速度によって抗腫瘍効果の方法が異なります。急速静注の投与方法が好中球減少に関連していると言われております。
両薬剤の比較
一見、記載した内容はほぼ同じものなっています。名前が異なりますが、最終的な成分はほぼ変わらないため副作用の症状は類似します。ですが、副作用の程度は異なります。
程度について比較したグラフをまとめてみました。ぜひこの表を見比べどちらが許容できるかを選んでいただけたらと思います。
負担度 | |||
治療方法 | XELOX療法 | FOLFOX療法 | |
投与間隔 | 3週間毎 | > | 2週間 |
投与期間 | 8回(6か月) | = | 12回(6か月) |
身体的侵襲 | 特になし | < | ポート造設(小さなOpe) |
大まかな医療費 | 約8.7万(3割負担) | > | 約7.8万(3割負担) |
副作用の印象と結果(私の偏見あり) | |||
抹消神経障害 | 冷感刺激 | > | 冷感刺激 |
手足症候群 | 重篤な手足症候群 | ≫≫ | 重篤な手足症候群 |
点滴部分の痛み | 血管痛 | ≫ | 血管痛 |
好中球減少 | 発熱性好中球減少 | < | 発熱性好中球減少 |
身体の違和感 | CVポートなし | ≪ | CVポートあり |
と私の強い偏見が入っておりますが、今まで患者さんの指導していて抱く印象を大きく反映させていただきました。身体の違和感がどの程度だ!と思われますが、体をねじるスポーツ(ゴルフ・テニスなど)には、少し違和感があると皆様言われております。ただし、XELOX療法ではゼローダ(カペシタビン)による手足症候群が出現する可能性があるため、ラケットなど強く握るスポーツは控えるように指導します。生活環境とも相談して治療選択をしていただけるのがいいかと思います。
- 会社が休めないから2週間より3週間毎にして治療したいとXELOX療法を選択された方
- 毎回点滴刺されるの嫌だし、ポートもそこまで目立たないのであればFOLFOX療法を頑張ると選択された方
- 持続注射嫌だから2時間で終わるXELOX療法がいいと選択された方
- 手足症候群が出現するとお寿司が握れなくなる(自営のすし職人さん)から少しでも少ないほうがいいとFOLFOX療法を選ばれた方
自身の生活と副作用の発現程度や特徴に応じて選んでおりました。ぜひ治療開始前には、生活と照らし合わせてみてください。迷ってしまったら医療従事者に相談してみてくださいね。
最後までご覧いただきありがとうございます。
読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。
薬剤師まさ