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不眠症治療~お薬を中心に~

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

がん治療に関わらず、不眠を訴えられる方がいらっしゃるかとおもいます。本日は、間違った知識が広がりがちな不眠症についてまとめてみました。

おじいちゃんやおばあちゃんが寝れないってよく言っているよね
年齢が高くなると睡眠時間も短くなります。8時間寝ないといけないってことはありませんよ

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不眠症

不眠症とは

  • 夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害。
  • 一旦寝ついても夜中に目が醒め易く2回以上目が醒める中間覚醒
  • 朝起きたときにぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害
  • 朝普段よりも2時間以上早く目が醒めてしまう早朝覚醒などの訴えのどれかがあること。

そしてこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヵ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられること。などの全てを満たすことが必要です。

なお精神的なストレスや身体的苦痛のため一時的に夜間良く眠れない状態は、生理学的反応としての不眠ではありますが不眠症とは言いません

また不眠の中に○時間睡眠をしていることとは記載されておらず、8時間寝ていないから睡眠薬をくださいというのは、ナンセンスですね。


年齢と睡眠時間

上の図は、記載があります通り、70歳の方で6時間寝ていれば十分睡眠がとれているということが示されております。15歳の中学生や高校生と同じぐらい寝なければならないということはありません。人それぞれに睡眠時間があります。


がん治療と不眠

一般にがん患者さんの30~50%程度は「不眠」を経験するといわれています。「不眠」は睡眠障害の一つで、何らかの原因により睡眠の開始や維持が障害され、本人の苦痛や社会生活における障害を引き起こしている状態を指します。


がん患者の不眠の要因

  • [身体的原因]痛み、発熱、嘔吐など病気の進行や治療に伴う副作用
  • [生理的原因]入退院など環境の変化
  • [心理的原因]ストレスや不安、家族への心配など
  • [精神医学的原因]うつ病、適応障害、せん妄など
  • [薬理学的原因]ステロイド、中枢神経刺激薬など薬剤による影響

と様々な要因で、不眠症状というのが出現しております。


不眠症治療について

不眠症治療(非薬物治療)

  • ぬるめのお風呂や足浴
  • 軽い読書
  • ストレッチや散歩
  • 音楽
  • 香り(アロマセラピー)
  • などなど

挙げられており、基本的には薬物療法が最初ではありません。その他にも

  • 夕食後には、カフェインの多いのみ物や食べ物を控える
  • 深酒はしない
  • ぬるめのお風呂と軽いストレッチ運動
  • 眠る時間は早すぎず、遅すぎず
  • 適度な暗さ(明るさ)に調節する

など言われております。最近は寝る前までスマートフォンなど触っているとなかなか寝付けないなどと言われており、非薬物療法をしっかりと実践してみることが重要です。


不眠治療(薬物治療)

現在⽇本の医療機関で主に⽤いられる睡眠薬には、ベンゾジアゼピン系、⾮ベンゾジアゼピン系、およびメラトニン受容体作動系の各睡眠薬があります。不眠症の改善効果は各薬剤間で⼤きな差はありません。

ただし作⽤時間の⻑さ(効果の持続時間)は薬剤ごとに異なり、

  • 超短時間作⽤型
  • 短時間作⽤型
  • 中間作⽤型
  • ⻑時間作⽤型

に分類されます。その不眠症に対する特徴にあわせて選択していくことが望ましいとされております。

ベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬の間で短期的効果には⼤きな差はなく、⼤部分の睡眠薬は服⽤初期(初⽇〜1 週間以内)から不眠症状の改善効果が実感できる速効性のお薬とされております。さらに1〜 2 週間以上継続服⽤することで効果がより安定するとされております。ただし‼入院時、やるこもなく、昼寝をしてしまって寝れないということであれば、睡眠剤の治療効果は得られないと思われます。

最近販売されたメラトニン受容体作動系の睡眠薬は、効果が発揮されるまでに3 ヶ⽉程度連続して服用することで効果が最も⼤きくなります。いずれの薬剤も飲んだらその日に効果が発揮するわけではないことを知っていただければと思います。


眠れない時にだけ使用する?

「寝れない時にだけ飲んでいます」と言われている方、よくいらっしゃいますが、ガイドラインでは

ベンゾジアゼピン系睡眠薬については休薬夜に薬物離脱性の不眠症状の悪化が⾒られる危険性が否定できないため、頓⽤は推奨されず、必要な場合には慎重に⾏うべきである。

と明記されております。非ベンゾジアゼピン系のゾルピデム【マイスリー】と呼ばれる薬剤に関しては不眠時に使用することの有用性についてあるかもしれないとされておりますが、それ以外の薬では有用であると言われておりません。睡眠薬の使用は医師or薬剤師に相談していただくのが良さそうですね。


追加で飲むときの注意点

なかなか寝付けない場合や⼀度寝ても⽬が覚めてしまったときに頓服で睡眠薬を使いたい場合、遅い時刻に内服すると翌⽇にこれらの持ち越しを⽣じる危険性が⾼くなります。

作⽤時間が最も短い睡眠薬であっても、服⽤後 6〜7 時間は眠気や頭の働きの低下が持続することが⽰されています。

従って、翌朝に睡眠薬が残らないようにするためには、起床時刻より 6〜7 時間前(午前 8 時起床なら午前 1〜2 時、7時起床なら午前 0〜1時)までを意識してください。

もう少し遅くなる場合には錠剤を半分にして使うなどをお勧めします。また、就床前に睡眠薬を内服した上に頓服を追加で内服する場合には翌⽇に持ち越しが更に強くなる可能性があるので注意が必要ですよ。


不眠症治療薬の注意点

睡眠薬の副作用

  • 注意力、集中力、運動機能の低下
  • 眠気
  • ふらつき
  • 頭痛
  • 倦怠感、脱力感

が一般的に言われております。睡眠薬を服用してから作業することは不可能ですよね。必ず就寝前に服用し、服用後は作業をしないようにしましょう。


睡眠薬の耐性について

睡眠薬は効かなくなるから、飲むのを極力避けています。という方、特にご高齢な方でよく耳にしますが、はっきりと言わせてください。

もうそんな薬はありません。現在使用されている睡眠薬は安全性が高いので、飲んだり飲まなかったりする方が不眠になる可能性があります。

以前は、バルビツール酸系睡眠薬という種類を使用されておりました。優れた催眠作用を有するものの、繰り返し使用することにより薬剤の効果が減弱したり(耐性)、止められなくなりやすい(依存性)と言われておりました。

現在使用されている薬剤は、安全性が高く、くせになって量をふやさないとだんだん効かなくなるということはほとんどない。また医師の指示に従って計画的に減らすことで止めることができる。とされております。

先ほど記載しました通り、⼤部分の睡眠薬は初⽇〜1 週間以内、さらに1〜 2 週間以上継続服⽤することで効果がより安定するとされております。継続して飲んでいただく必要があると考えられます。


患者さんからよくある質問

睡眠薬よりもお酒を飲むほうが良くないですか?
アルコールには、⼀時的には寝付きが良くなり睡眠が取りやすくなったように感じる効果があります。しかし、実はそうした効果は⼀晩の前半だけにしか⽣じず、後半になると逆に眠りが浅くなって頻繁に⽬が覚めるなど睡眠の質が悪化します。睡眠をとるための(睡眠薬代わりの)寝酒は百害あって⼀利なしです。

⾼齢者の不眠症にも睡眠薬は効果があるでしょうか?
⾼齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される。ベンゾジゼピン系睡眠薬は転倒・⾻折リスクを⾼めるため推奨されない。とされております。夜間のトイレなどによって転倒リスクが非常に高まります。まずは生活環境をしっかりと調整していただくところからはじめましょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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