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【髄注】髄腔内投与について

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

髄腔内投与という言葉聞きなれない言葉かもしれませんが、髄注というような表現になることが多いかと思います。とても不快ですよね…治療としてはとても重要な役割を担っており、解説したいと思います。


背中に注射するなんて怖くない?
受けているときはそうだと思います。ですがとても治療で重要な役割をしているので、頑張りましょう

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髄腔内投与(髄注)

髄腔内投与(髄注)とは

抗がん剤を脊髄腔に注入する治療を指します。脳脊髄液を採取した後、針を抜かないでそこから直接抗がん剤を注入します。抗がん剤の水分量と同量にしておかないと、髄腔内の圧力が増すことによって頭痛などの症状が出現することから、髄液を一度抜いて、投与するとされております。

図にもお示しした通り、髄腔内の髄液は脳とつながっております。悪性リンパ腫では脳転移(血液領域では、中枢神経浸潤と表現されます)しないように【予防的に】投与します。中枢神経浸潤した悪性リンパ腫は、治療が困難になることが多いです。一番の理由は抗がん剤治療の選択肢がとても少ないことが挙げられます。後ほど薬剤について紹介しますが、使用可能な薬剤が4種類しかございません。


髄注の目的

先ほど書きました通り、一般的には予防的に使用することが多いです。稀に治療として使用することがございます。それは脳転移(中枢神経浸潤)されている状態が明らかになった場合、出現している症状を抑制させるために使用することがあります。


どんな疾患が対象になるのか

髄注の予防投与が対象になる疾患は、

  • 急性リンパ性白血病
  • 急性骨髄性白血病
  • バーキットリンパ腫
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の一部

が挙げられます。びまん性大細胞型の一部とは何か。それはどんな場所にできたDLBCLかによって、髄注を実施するかどうかについて判断します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の髄注が必要になる原発部位

  • 精巣原発
  • 乳房原発
  • 副鼻腔(鼻ですね)
  • CD5陽性の場合、5~10%高いという報告があるので、その場合も検討される先生もおります
  • 眼窩
  • 末梢血にリンパ腫がいた場合(血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVBCL)など)
  • AIDs関連リンパ腫

と、謎のワードが沢山ありますが、精巣・乳房・脳にすぐ届いちゃうかもしれない場所であったら、髄注を実施します。


いつ髄注をするのか?

主に抗がん剤投与日に治療することが多いです。治療自体は、どのくらい休まないといけないという休薬期間は明記されているものがなく、連日でもOKです。ただ連日するとなると、かなり骨髄抑制(白血球減少)が強く出てきます。また抗がん剤が中枢に行く薬剤と併用する場合には、使用しないことがあります。


髄注の治療薬

髄腔内に投与することができる薬剤

全部の抗がん剤を髄液内に投与することはできません。投与可能薬剤は、

  • メソトレキサート(MTX)
  • キロサイド・シタラビン(AraC)
  • デカドロン(DEX)
  • プレドニゾロン・プレドニン(PSL)

となっております。それ以外の薬剤は血管内に投与することは可能ですが、髄液の中には安全性が示されておりません。なので、この薬剤たちだけでがん細胞と戦わないといけません。それはすなわち治療選択が少なく治療に難渋することがございます。


メソトレキセートとキロサイドの特殊な性質

普段、脳に行ってはいけないものを防ぐために、脳へ行く血流のところには門が存在します。その名前を血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)と表現します。基本的にはこのBBBが抗がん剤を寄せ付けません。ですが大量に投与した場合、メソトレキサートとキロサイドには別ルートで髄腔内に移行することができる移動経路(トランスポーター)を持っております。その経路を逆手にとって大量に投与する治療方法になっております。

メソトレキサート

メソトレキサートには、大量に投与する方法があります。その名は「大量メソトレキサート療法」…はいそのまんまです。これをカッコよく医療従事者が言うのは「High dose MTX」→略します「大量メソトレキサート」…はい。

この大量MTXがすでにレジメンとして含まれている治療がいくつかございます。

  • HyperCVAD/MA療法
  • R-CODOX-M IVAC療法
  • R-MPV療法
  • SMILE療法

髄注では、1回に12~15㎎のメソトレキサートを投与しますが、大量メソトレキサートでは血液の中に3000~5000㎎程度投与します。とてつもない量になりますが、これにはわけがございます。

実は髄液の投与量で得られる濃度は低く、大量MTXによる投与方法の方が高濃度にすることができます。がん細胞は抗がん剤の濃度によって破壊される量が変動します。濃度が高ければ壊れるがん細胞の量も増えますが、一方で壊れて欲しくない正常の細胞も壊れてしまいます。とても注意が必要な薬剤になっております。

キロサイド・シタラビン

  • HyperCVAD/MA療法
  • R-CODOX-M IVAC療法
  • R-ESHAP療法
  • CHASE-R療法
  • 白血病の地固めの大量キロサイド

HAと記載されているレジメンもありますが、High dose AraCを指しております。お気づきかと思いますが、HyperCVAD/MA療法とR-CODOX-M IVAC療法はさっきも出てきたかと思います。基本的には、強度を上げるためにセットで使用することが多く、キロサイド単剤で治療するのは白血病の地固め療法だけになっております。これは地固めになりますので、腫瘍がいないことを確認後、雑草の根っこまで取り切る治療になっていますので、目的が少し予防的になっているかもしれません。


最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

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