ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。
レンビマ:レンバチニブメシル酸塩について紹介したいと思います。レンビマと呼ばれる薬剤は、根治切除不能な甲状腺癌をはじめ切除不能な肝細胞癌に適応を取得している経口抗がん剤の1つです。甲状腺癌や肝がんでは、治療選択が少ない中の治療薬であり、とても期待されています。
レンビマ:レンバチニブ
レンビマの作用機序
レンバチニブは、腫瘍血管新生及び腫瘍増殖等に関与する、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR1-3)、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体(FGFR1-4)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)α、幹細胞因子受容体(KIT)、Rearranged During Transfectionがん原遺伝子(RET)等の受容体チロシンキナーゼを阻害した。また、レンバチニブは、VEGF及びFGFによって誘導される血管内皮細胞の血管様管腔構造の形成を阻害した。…と謎の言語達が飛び交っています。
参考文献:レンビマ添付文書
もう少し簡単にレンビマを紹介すると
がん細胞はより多くの栄養を摂るために、血管を新しく作り自分のところに血液が来るように仕向けます。その血管を作るための指令物質である血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR1-3)など様々な指令物質を阻害することで、血液ががん細胞に来なくなるため餓死します。兵糧攻め作戦の抗がん剤であることが言われております。
適応症
- 根治切除不能な甲状腺癌
- 切除不能な肝細胞癌
の2つとなっています。
主な治療方法
レンビマは癌腫や体重によって投与量が異なり注意が必要とされております。これは薬剤師さんがチェックしてくれておりますのでご安心ください。
根治切除不能な甲状腺癌では、
通常、成人にはレンバチニブとして1日1回24mgを経口投与します。また患者さんの状態により投与量を調整します。副作用があらわれた場合は、症状、重症度等に応じて減量や休薬、中止について検討を行います。減量して投与を継続する場合には、1日1回20mg、14mg、10mg、8mg又は4mgに減量することとされています。
参考文献:レンビマ添付文書
切除不能な肝細胞癌では、
通常、成人には体重にあわせてレンバチニブとして体重60kg以上の場合は12mg、体重60kg未満の場合は8mgを1日1回、経口投与します。また患者さんの状態により適宜調整を行います。中等度(Child-Pughスコア7〜8)の肝機能障害がある肝細胞癌患者に対する最大耐用量は1日1回8mgであることが確認されています(体重が60kg以上であっても必ず減量で始めます)。中等度の肝機能障害を有する肝細胞癌患者に対しては減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意して治療をしていきます。
参考文献:レンビマ添付文書
治療を始める前に教えていただきたいこと
- 現在使っている薬は、薬局で買ったお薬も含め、すべて主治医・薬剤師にお知らせください。薬物相互作用を確認いたします。
- 以前にお薬や注射の治療を受けて、発疹やかゆみなどが出たことがある方は、あらかじめ主治医・薬剤師に申し出てください。
- 他の医師または歯科医師の治療を受けるときは、レンビマの治療を受けていることを必ず伝えてください。副作用の中に創傷治癒遅延という「傷の治りが悪くなる」という副作用がございます。アバスチンをお休みすることで回避することができますので安全性を確保するためにお伝えください。
レンビマの副作用
▶ 高血圧
血圧は毎日測定してください。高血圧は動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、腎臓病など発症することがあります。無症状のことが多く、毎日測定することを推奨します。具体的な数値として、収縮期血圧(上が)160mmHg以上又は拡張期血圧(下が)100mmHg以上の場合、飲み薬のお休みを検討します。血圧計を買ってでも管理することをお勧めします。
- 測定前に喫煙、飲酒、カフェインの摂取は控えましょう。
- 静かで適当な室温の環境で、椅子に座って1〜2 分の安静後に測りましょう。
- 腕を机などに乗せ、心臓と二の腕が同じ高さになるようにして測定しましょう。
▶ 手のひらや足の裏の痛みや腫れ(手足症候群)
手足症候群があらわれることがあります。手足症候群は、重力や摩擦などの負担・刺激が加わりやすい部分・乾燥している部分に現れます。
- 雑巾絞りなどの手に負担のかかる作業はなるべく控えましょう。
- ゴルフなどグリップを強く握るスポーツも控えましょう
- 水仕事などを行う際は、ゴム手袋をして刺激を避けましょう。
- 長時間の歩行や立ち続けることは避けましょう。
- 足に合った履きやすい靴を履きましょう。
- 厚めの靴下や柔らかい中敷きを装着しましょう。
- 締めつけの強い靴下は避けましょう。
- とにかく保湿をして、症状の悪化が起こらないように予防します。
- 手足症候群が出現したら悪化を止めるため、ステロイドを使いながら対応します。
▶ 食欲低下・体重減少
食べたいものを、食べたいときに、少量ずつ食べることをお勧めします。
- 食べることができないときでも、水分摂取は必ずしてください。
- においの強いものや脂肪分を多く含む食べ物は避けましょう。
▶ むくみ、尿が泡立つ(蛋白尿)
- 尿の泡立ちが必ずしも出現するわけではありませんが、尿タンパクが増えると尿の泡立ちが見られることが多いようです。タンパク尿が一定量検出されたら休薬します。
▶ 甲状腺機能低下症、疲労感、倦怠感
甲状腺機能低下症では「首元の腫れ」、「元気がない」、疲れやすい」、「まぶたが腫れぼったい」、「寒がり」、「体重増加」、「いつも眠い」など、このような症状が見られた場合でも、適切な処置を行うことで多くの場合は症状をうまくコントロールしながら治療を続けることができます。
特に注意して欲しい副作用
出血
鼻血や血尿、喀血、歯肉出血、血便などの症状があらわれることがあります。
血栓塞栓症
動脈や静脈に血のかたまりができ、胸痛や胸が締め付けられる感じ、手足のしびれ、片足の急激な痛みや腫れなどの症状があらわれることがあります。
肝障害
白目や皮膚が黄色くなる、吐き気などの症状が現れることがあります。定期的に肝機能を検査することで早期発見ができます。
レンビマ内服治療は外来の通院頻度が下がり自由に生活する時間が多くなります。ただ一方で、普段と異なる症状が出現した場合には、医療機関にいかないと副作用が重篤になる可能性があります。記載されている内容と似ていることがあったり、普段と体調が異なって辛い場合には病院に連絡してみてください。
最後までご覧いただきありがとうございます。
読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。
薬剤師まさ