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がん治療におけるステロイドの役割

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

ステロイドと聞くとあまり良いイメージがない方が多いかと思いますが、がん治療においてステロイドは非常に重要な役割をしております。正しく使えば、とても良い薬ですので、正しく安全に安心して使用できるようにご紹介したいと思います。ご参考になれば幸いです。


ステロイドは怖い薬って言われているから、脱ステロイドとか言われているの聞いたことある。
脱ステロイドという言葉は非常に危険です。正しく使用すればとても良い薬です。なんでもかんでもステロイドを避けてしまうと非常に危険な状態になりかねません。

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ステロイド

ステロイドとは

ステロイドとは、副腎(両方の腎臓の上端にあります)から作られる副腎皮質ホルモンの1つです。ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われています。副作用も多いため、注意が必要な薬です。


ステロイドの種類

がん治療において、使用するステロイドは点滴か内服薬が中心になっています。がん治療以外に用いるステロイドの種類は多く、内服薬・外用剤・点滴と様々な投与方法が存在し、目的や状況に合わせて使い分けられています。がん治療に使いそうなステロイドを抜粋してみました。

種類 商品名 糖質コルチコイド 鉱質コルチコイド 1錠中の含有量 半減期(h)
ヒドロコルチゾン ソルコーテフ 1 1 10 10±2
プレドニゾロン プレドニン 4 0.8 27±9
メチルプレドニゾロン ソルメドロール 5 0  4 27±9
デキサメタゾン デカドロン 25 0 0.5 45±9
ベタメタゾン リンデロン 25 0 0.5 45±9


がん治療におけるステロイドの種類

がん治療では主にプレドニゾロン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンが使用されます。

【プレドニゾロン】

プレドニゾロンは血液がんの1つである悪性リンパ腫に用いられます。高用量で短期間使用され、初回治療のCHOP療法や再発治療のEPOCH療法に用いられます。少量では抗炎症作用や免疫抑制作用を有しておりますが、高用量の場合、核内受容体を介して核内のendonuclease(ヌクレオチド鎖の途中を切断する酵素)を活性化し、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することにより殺細胞作用を示す効果を持つことからリンパ腫を破壊する作用もあります。

【メチルプレドニゾロン】

電解質コルチコイド作用をほぼ完全に抑え、かつ、糖質コルチコイド作用はヒドロコルチゾン(コルチゾール)に比べ5倍に増強されている。また肺への移行性はプレドニゾロンに比べ良好とされており、気管支喘息治療においても用いられる。治療ではESHAP療法に用いられます。他には間質性肺炎の治療の際、大量ステロイド投与によって炎症を抑え込みますが、肺への移行性の良さからメチルプレドニゾロンを使用します。

【デキサメタゾン】

炎症の原因に関係なく炎症反応・免疫反応を強力に抑制する。急性炎症、慢性炎症、自己免疫疾患、アレルギー性疾患などの際に使用されています。多発性骨髄腫治療ではKey drugとして用いられ、リンパ腫ではDeVIC療法などに用いられることがあります。


糖質コルチコイドと鉱質コルチコイド?

糖質コルチコイドとはコルチゾールと呼ばれ、副腎皮質の束状層から分泌されます。抗炎症作用や免疫抑制作用など色々なことに関与していることから、一般的に皆さんが想像するステロイドはこの糖質コルチコイド=コルチゾールをイメージしております。

鉱質コルチコイドとはアルドステロンと呼ばれ、副腎皮質の球状層というところから分泌されます。体内のカリウムを排泄するなどして電解質の代謝作用を持っております。

そのため、プレドニンやソル・コーテフはカリウムを排泄するアルドステロン効果があるため、低カリウム血症に注意する必要があります。

高級トン足モダン焼き

高:鉱質コルチコイド 
級:球状層↑ 
トン:糖質コルチコイド 
足:束状層↑ 
モ:網状層↓ 
ダン:男性ホルモン

このようなゴロを教えてもらい薬学部時代は学びました。


がん治療におけるステロイドの役割

抗がん剤としての役割

先ほども記載しましたが、大量にステロイド(プレドニンやデカドロン)を使用した場合、細胞の核内受容体を介して核内のendonuclease(ヌクレオチド鎖の途中を切断する酵素)を活性化することで、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導、殺細胞作用を示す効果を持つことからリンパ腫・骨髄腫を破壊する作用を発揮します。


抗がん剤をサポートする(吐き気止め)

デキサメタゾンには遅発性の吐き気を抑える効果を持っています。抗がん剤の日+2日間など服用したりすることがあります。プレドニゾロンにも吐き気を抑える効果が兼ね備えています。


抗がん剤をサポートする(浮腫改善)

またまたデキサメタゾンには、浮腫を抑制する効果も兼ね備えています。ドセタキセル治療において、浮腫を抑えるためデキサメタゾンを服用することがあります。


がん治療のサポート

全身倦怠感や食欲不振の改善・解熱剤効果・呼吸状態の改善などの目的で使用されることがあります。もはや元気薬ですね‼


経口=点滴?

内服薬と点滴製剤

プレドニゾロンやデカドロンには内服製剤だけでなく、注射製剤も存在します。現在実臨床では、内服の投与量=注射の投与量と考え同じ量でOKとされております。ですが実際は、

  • プレドニゾロンのバイオアベイラビリティ:82 ± 13% 
  • デカドロンのバイオアベイラビリティ:78%

と微妙に少ないのではないか?と感じるところですが、注射と同じと考えいます。使い分けなどありません。

めちゃくちゃ苦いので点滴じゃできないのですか?
できますよ~点滴ができる環境であればOKです‼

ステロイドによる副作用

ステロイドの副作用について

これまで沢山のいいことを記載してきました。これは何も嘘は書いておりません。上手にステロイドを使用することで、上手に副作用をコントロールすることができます。

実際に書き出してみると

  • 易感染性
  • 骨粗しょう症(ステロイド骨粗鬆症)
  • 糖尿病(ステロイド糖尿病)
  • 消化性潰瘍(ステロイド潰瘍)
  • 血栓症
  • 精神症状(ステロイド精神病)
  • 満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満
  • 動脈硬化、高脂血症
  • 高血圧症、むくみ
  • 白内障(ステロイド白内障)
  • 緑内障(ステロイド緑内障)
  • 副腎不全(ステロイド離脱症候群)
  • ステロイド痤瘡(ざそう)
  • 大腿骨頭壊死(無菌性骨壊死)
  • その他(増毛、脱毛、生理不順、不整脈、ステロイド筋症、など

が見られることがあります。いずれもステロイド薬の減量により改善します。また長期投与によって出現する副作用であり、短期で使用していれば特に問題にはなりません。ただ闇雲に使わないのは、病状を悪化させる原因です。自身で判断して勝手にやめてしまうのは、絶対に避けて欲しいです。


最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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