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【消えた?本当に伝えたかった】人生会議ポスターの意味

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

少し前人生会議のポスターが話題となりましたが、厚生労働省は「 この度、「人生会議」の普及・啓発のため、PRポスターを公開したところですが、患者団体の方々等から、患者や遺族を傷つける内容であるといったご意見を頂戴しております。厚生労働省としましては、こうしたご意見を真摯に受け止め、掲載を停止させていただき、改めて、普及・啓発の進め方を検討させていただきます。 」とのことでポスターの掲載を取りやめてしまいました。

確かに内容が過激だったかもしれませんが、なぜ?そんなことになっていたのか、本当に伝えたいことはなんなのかについて解説したいと思います。

人生会議って言ってもいつするものなんだろうね
何度もします。一度きりだけではなく、今の状況に合わせて一番いい選択を何度も相談することを意味しているんです。

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人生会議

人生会議に隠れた言葉

自らが望む、人生の最終段階の医療・ケアについて話し合ってみませんか」と厚生労働省は、問題定義を投げかけています。なぜそんなことを元気な人たちに投げかけるのか。そこに大きな反発があったのかもしれません。

その裏には、自分自身の将来を自分で決めておく準備が重要であるというメッセージが隠れていました。患者さん本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に、現在の病気だけでなく、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ、終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定が出来なくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておくアドセンスケアプランニング(Advance Care Planning :ACP)が重要になってきます。


ACPとは

今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス
  • 患者が望めば、家族や友人とともに行われる
  • 患者が同意のもと、話し合いの結果が記述され、定期的に見直され、ケアにかかわる人々の間で共有されることが望ましい。
    – ACPの話し合いは以下の内容を含む
    • 患者本人の気がかりや意向
    • 患者の価値観や目標
    • 病状や予後の理解
    • 治療や療養に関する意向や選好、その提供体制

【参考文献:第1回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会 資料】

と記載されている通り、治療を受けている患者の状況を自身で把握することや自分の将来を考えて、準備する必要のあるものの確認が挙げられます。昔から言われている「畳の上で…」という環境はすぐに作り出すことはできません。ご自宅に戻って行う処置や介護保険の申請などの十分な医療資源の活用方法、訪問診療医・訪問看護の体制構築などなど、家での生活をするためにも多くのことを準備する必要があり、またそれが非常に時間がかかります。


ACPを考える必要がある報告

なぜそんなことを早くから考える必要があるのか。頑張ってがん治療を乗り越えた・戦っている人に失礼であり、敬意に欠けるとご意見があったかと思います。その気持ちは十分にわかります。私ももしそんなことを言われたら、怒るかもしれません。ただ、過去のエビデンスに基づいて治療を行っているのと同じようにACPについても報告が存在します。

終末期においては約70%の患者で意思決定が不可能であった。

【参考文献:Advance Directive and Outcomes of Surrogate Decision Making before Death】

治癒が不可能か化学療法中のがん患者の70-80%は治癒が不可能であることを理解していない

日本人でのデータではございませんが、このような書き方をされている報告も存在します。いずれもThe New England Journal of Medicineという世界最高峰の論文に報告されているものになります。

その他にもこのような報告もあります

  • 意向は曖昧で、その度に変わり、遠い未来に対する仮の選択になる
  • 不確実な判断、何をもたらすか理解されていない
  • 老人ホームの居住者のうち4割が5年間のうちに心肺蘇生に関する意向を変える
  • 生命の危機に直面している患者には患者は話し合うことを避ける傾向(否認)
  • 話し合いがされても、行われる医療行為をするかしないかに限られ、その背景にある価値観や目標が探索されない
このような問題を解決するためにはどんなことをすることが望ましいのか?
事前に病状の認識を確かめて、あらかじめ意思を聞いておけばよいのではないか?プロセスを共有することで、患者がどう考えているかについて深く理解する必要があり、価値感を理解し共有しておく必要がある

それを誰が聞いてもわかるよに、インパクトのある言葉

人生会議

となったわけです。少し、嫌な気持ちがなくなりませんか?

英国では、「Advance Care Planning first for quality endof-life care」と言われ、同様にカナダやオーストラリアでも保健医療政策の中で重要なものと位置づけられている。日本の文化を考えると受け入れにくい考えかもしれないが、医療現場ではとても大きな問題になっている現状があります。


人生会議のやりかた

Step 1:あなたが 大切にしていることは 何ですか?

  • 生活や療養の上で一番大切にしていることはどんなことですか?
  • 今後どのような治療を受けていきたいか具体的な希望はありますか?
  • 逆に今後これだけはしたくないということはありますか?
  • それはどうしてですか?具体的に教えてください

このようなことを聞いていく必要があると思います。これは、本人だけではなくご家族にとっても重要なことかと思われます

患者・家族にとっては2つのメリットが存在します。まず、患者本人が本当は望んでいないこと、受けたくない治療などをされる状態を回避することができます。次に家族の心の負担が減ることが挙げられます。家族が代理意思決定者になる場合に、本人の意思がよくわからないまま代理意思決定を行うと、厳しい決断をせざるを得ない状態になった場合、家族の気持ちの負担感は非常に大きく、本人が亡くなった後に家族に気持ちのつらさや大きな後悔が残る場合もあります。ACPにより代理意思決定についての話し合いを行うことで、家族の不安や抑うつが減ることがわかっています。

Step 2: あなたが信頼できる人は誰ですか?

一般的にご家族の方が多くなるケースが多いかもしれません。

特に脳転移のリスクの多いがんや認知症がある場合には、代理意思決定者が必要です。なるべく早い段階で代理意思決定者を決めて、機会があれば病院に呼んで意思決定の過程に同席してもらう必要があると一般的に言われております。「私だけ話を聞けばいいです」「家族には言いたくない」という思いが先行していまうかもしれませんが、ご自身の希望を満たすためにはご自身の思いを誰かに伝える必要があると思います。

もう一つ重要なことは、代理意思決定者は何人でも良いことです。たとえば息子と娘と妻で本人の意思について、本人に聞いたり記憶をたどるなどしてご本人の意向を推定して決めるということでも問題ありません。家族全員が「お父さんの価値観を確認して話し合っておこう」という考えで一致していれば、ACPが順調に進み、患者さんの意向を尊重した代理意思決定ができると思います。


Step 3: 信頼できる人や 医療・ケアチームと話し合いましたか?

では、ご家族の方と今後の未来について話し合ってもご家族の方だけでは、その目標を達成することができません。医療資源を使用しながら生活の質(QOL)を落とさないように生活することが重要です。

自らが希望する医療やケアを受けるために大切にしていることや望んでいること、どこでどのような医療やケアを望むかを医療従事者と共有することで、最も良い状態を早期から準備することで、自分自身の希望通りのスピード感で実現することが可能です。

家に帰りたいのに、ベッドが届いていない。介護申請が下りていない。訪問診療医が決まってない。訪問看護の面談日の予約が、なかなか取れない。私の疾患に必要な処置ができる施設が少なくて見つからない。などなど希望に沿った医療を提供しようとしても色々な問題から遅延してしまうことが往々にしてあります。

Step 4: 話し合いの結果を大切な人たちに伝えて共有しましたか?

 国の調査によると、約70%の方が自宅での最期を希望しているにもかかわらず、実際に自宅で亡くなった方は約15%しかしません。ご家族がご自身の決断をするときに、ご自身の考えと反してしまうことが往々にしてあります。共有しておくことで、ご家族の方も迷いなく・またご自身も希望する医療を迅速に受けることができます。


Step 5: それを体調に合わせ繰り返す

これが最も重要かもしれません。先ほど記載した通り、

老人ホームの居住者のうち4割が5年間のうちに心肺蘇生に関する意向を変える

と言われている通り、自身の状態によっても大きく判断が異なることがあります。これは、病状のコントロールが不良となり新規治療へ移行するタイミングなどに応じてご家族とお話合いを進めつつ医師・看護師・薬剤師など医療従事者にご相談いただけると対応することができます。


期待されていた本当の人生会議

どんな理由で名付けられたのか

選定愛称:

  • 人生会議

選定理由:

  • 意味が明確な単語の組み合わせにより、日常会話に浸透していくことが期待できる。
  • 家族等、信頼できる人たちと輪を囲んで話し合う、というイメージが湧く

このような話し合いがされて、厚生労働省は決定をしております。身近に感じて欲しいという言葉が、理解されなかったのかもしれません。早すぎると不明確、不正確なものとなってしまい、早すぎるACPは望んでいないことが挙げられます。問題提議することは非常に重要なことかもしれませんが、問題提議された方たちにとっては、まだ早すぎるACPだったのかもしれません。


人生の最終段階における医療・ケアの在り方

ここまで来ると医療というより哲学になってくるのかもしれません。ただし、医療従事者や以下のマインドをもって医療提供をしております。

  • 医療提供において生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は考えていない。
  • 人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断
  • 医療・ケアチームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人・家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行うこ

人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続

時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて本人の意思が
変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供
と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるよう
な支援が行われることが必要である。

本人の意思確認ができない場合には、次のような手順により、

  • 医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。家族等が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
  • 家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
  • 時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。

医療従事者にとって患者さんの気持ちを汲み取ることは、困難であることがあります。家族しか知らない思い・環境・哲学・思考など、接している時間は医療従事者に比べ非常に長いと思います。「もしも」何かあったとき、自分自身でご家族の方の思いを決断しなければならない時、何を参考にしたらいいでしょうか。「先生たちはどうしますか?」「先生にお任せします」となってしまいませんか?それを患者さんご本人が本当にしてほしいものなのでしょうか。一度話し合うことが重要なのかもしれません。


最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、とても嫌な思いをされた方もいらっしゃるかもしれません。元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、ご自身が最高の人生を送れるよう貢献したく書かせてもらいました。より読んでいただけた方にとって貴重な情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

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