【詳しく解説】R-B療法について

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

今回は(R-)B療法（Bはベンダムスチンの頭文字でトレアキシンという名前で販売されています）について紹介したいと思います。

R-B療法は一般的に、「濾胞性リンパ腫」と診断された場合に「抗がん剤治療が必要」とされた患者さんの一番最初に使用することがあります。 いきなり治療の説明をされても、暗号のような名前の数々を言われ、いただいた用紙を見直しても理解不能になることがあると思います。ご自宅に帰ってから調べる際、結局わからないこともあるかと思います。ズバッとまとめてみました。 少しでもご参考になると嬉しいです。

R-B療法

R-B療法の対象疾患

R-B療法は悪性リンパ腫を治療するための治療方法です。悪性リンパ腫といっても沢山（80種類ぐらい）ありますので、この疾患とは言い切れない部分があります。ただしR-B療法のR（リツキサン）はB細胞系という悪性リンパ腫の患者さんの約7割程度に発症するタイプにしか使用することができません。T細胞系の悪性リンパ腫と診断された方は、B（トレアキシン）だけでの有効性に関する報告はなく、別の治療になります。

R-B療法はゆっくり成長型悪性リンパ腫に使用することが一般的であり、

• 濾胞性リンパ腫
• マントル細胞リンパ腫

などが一般的に挙げられます。基本的には初回に用いられる治療になっております。そんなR-B療法について安全に投与できるよう、安心して投与できるよう注意点について解説していきたいと思います。

R-B療法 療法の治療スケジュール

• R-B療法は4週間を1セット
• 29日目が2コース目のday1になる
• リツキサンは別日に行うこともある
• 体調が悪い場合は開始が遅れることがある

R-B療法の治療の目的と期待される効果

完全にがん細胞を消すことを考えております。治ったと言い切れないので「寛解」という言葉に置き換えて説明することが一般的ではありますが、完全に消す「寛解」を目指して治療を行います。

ただ期待される効果として、寛解を狙って治療していきますが、必ず再発してしまうというところが問題です。濾胞性リンパ腫はマントル細胞リンパ腫には腫瘍細胞が消えても再発する可能性が残っているところに問題があります。全く再発せず生活している方もいらっしゃいますが、他の悪性リンパ腫に比べ再発する可能性は高いことが言われております。

腫瘍細胞が残っていれば再発リスクは高いとされておりますのでしっかりと消すことが大事になってきます。

R-B療法の副作用

採血でわかる副作用と注意点

骨髄抑制

白血球や赤血球・血小板など血液の成分が全体的に低下することを骨髄抑制といいます。R-B療法は外来で治療ができてしまいます。輸血に頼ることはあまりありませんので、貧血が強すぎてふらふら・血が止まらないぐらい血小板が低いということは基本的にはありません。ただ、治療強度が高い治療になっているため、輸血が必要になってしまう可能性もあります。輸血した次のクールには減量して体に優しい治療に戻していきます。

気を付けて欲しいのは白血球減少（リンパ球）です。白血球減少やリンパ球減少が起きても、たとえ白血球が０になっても体では異変がありません。ですが、普段風邪をひかないでいるのも体の中に入ってきたばい菌を白血球がやっつけてくれるから風邪をひかずに済んでいるですね。病院もきれいなところではありません。病室にいても日頃の手洗いうがいを行い感染症にならないよう注意する必要があります。

白血球を増やす薬:G-CSF

これを一日でも短くするために白血球を増やす注射を行います。それを皆さんG-CSFと表現することが多いです。G-CSFとは白血球の家族の一員である好中球を増やす指令であり、人工的に作った成分です。それを投与することで感染症になりやすい期間を一日でも短くすることを目的に投与したりしています。

ただしリンパ球の回復はとても時間がかかると言われており、治療後も継続して感染対策が必要になってきます。リンパ球とは、ナチュラルキラー細胞（NK細胞。 細胞性、細胞傷害性自然免疫において機能する）、T細胞（細胞性、細胞傷害性適応免疫）、B細胞（液性、抗体による適応免疫）を指しております。これが少ないと、ばい菌が体の中に侵入しても攻撃してくれず感染症としてひどくなる可能性が考えられます。全くリンパ球がなくなるわけではないので、毎回重篤な感染症を引き起こすわけではございませんが、起こしやすくなるのは事実です。日々の手洗いうがいを徹底しましょう。

実際に感じる副作用と注意点

一番怖いものですよね。何が起こるの？というより自分の体はどうなっちゃうのかというところ。危険をある程度理解していることで、注意すべき点がわかりますので、ぜひ知っていただけると嬉しいです。

抗がん剤の副作用において重要なのは、「いつ何が起こるか」という時期です。

上の図に示す通り、時期によって副作用の出現するものが大きく異なります。時期を意識して解説を行いたいと思います。

R-B療法　day1-day7までに起こりそうな副作用

Infusion Reaction/インフュージョンリアクション

アレルギー反応の一種です。リツキサンという薬剤は一部マウスの抗体を使用していることから、体の中に入った一番最初だけ異物として認識されます。初回投与の時だけ注意が必要です。具体的には頭痛・かゆみ・発疹・寒気・息苦しさなど多岐にわたる副作用が出現する可能性があります。投与速度をじわじわと上げながら注意深く見ていきます。速度を上げた時注意して観察していただき、異変がありましたらナースコールを押してください。

気持ち悪さ・嘔吐

副作用対策として吐き気止めは使っております。ですが、まれに出現してしまうことがあります。万が一吐いてしまった場合、2回目の治療では更なる強化をして準備しますのでご安心を。トイレでゲーゲーしているイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は吐き気止めも進化しております。また吐き気や嘔吐が出た場合にも使える薬が沢山あります。我慢せず教えてください。

倦怠感

これは抗がん剤前の点滴の中に吐き気止めとして使っているデキサメタゾンがなくなったday3.4に出てくることがあります。改善することがなかなか難しく時間が解決してくれるのを待つこともしばしば。ですが、デキサメタゾンを少量ずつ減らずと倦怠感の改善につながることもあり、相談してほしい副作用の1つです

便秘

抗がん剤治療では、吐き気のリスクが少しあるため、吐き気止めをしっかりと使います。その吐き気止め自体が便秘を誘発させると言われております。吐き気止め・倦怠感の活動量低下のダブルパンチで便秘になります。下剤をうまく使いながらしっかりと排便しましょう。硬い便が出てお尻が痔のようになるのが一番困ります。感染源になることがありますので、柔らかくしましょうね。

口内炎

粘膜障害の一種である口内炎ですが、抗がん剤の直接的なダメージによって傷がついてしまう状態です。こちらもお尻同様に感染源になることがありますので、必死にうがいをしていただけたらと思います。

血管痛

トレアキシン特有の副作用ですが、点滴部位の少し上あたりがズキズキ痛みがあることがあります。投与が終了してしまえば痛みは消失しますが、点滴中痛みが出るのはかなりつらいですよね。この血管痛の要因は解明されていませんが、一般に低いpHと高い浸透圧が要因とではないかと言われており、トレアキシンのが問題である可能性が考えられます。温めてあげたり点滴を追加するだけで解消されますので是非我慢せずお伝えください。

薬剤熱・皮疹

これまた薬剤性と言われており、熱が投与した日だけふわっとあがることがあります。点滴した日には、解熱剤で対応します。ですが、点滴した翌週に発熱がある場合には感染症による影響が考えられますので、ご自宅で発熱した場合には連絡してください。皮疹はお腹・胸部・背中など柔らかいところにパラパラ小さな発赤が出てくることがあります。基本的には飲み薬で対応しますので痒かったらすぐ教えてください

R-B療法 day8-day14までに起こりそうな副作用

骨髄抑制です。

とにかく感染対策を行いましょう。外出時はマスク着用・手洗いうがいは必須です。ですが、家で引きこもり状態になる方もいらっしゃいますが、そこまで厳重でなくても構いません。普段通りの生活で、家に戻ってきたら手洗いうがいをお願い致します。トレアキシンはリンパ球が下がりやすい治療になっており、感染症を疑う場合にはすぐに連絡が欲しいですね。

砂埃が凄いところ・埃が多いところ・ガーデニングなどの泥や土を触ることはだめです。カビが非常に多く、一度かかると１か月程度カビの治療をしないといけません。お守りください。

R-B療法 day15-day21までに起こりそうな副作用

脱毛は起こりません。

一般的にこの時期に脱毛が起こるとされておりますが、この治療では脱毛は起こりません。起こりそうな副作用欄に書いてないと「あれ？髪抜けるのかな」となるかもしれないので書きましたが抜けません

R-B療法　2ｺｰｽ目以降に起こる副作用

一般的には28日間の流れを繰り返すと言われております。

他にも困るのが

味覚障害です。

味覚障害は大多数の抗がん剤において発症するリスクがあり、治療で用いる抗がん剤からも味覚障害は必ず起こると言っても過言ではございません。食べやすいものを見つけながら、上手に対処していきましょう。

家族が考える R-B 療法の注意点

自宅の環境的注意点

動物を飼っている方注意してください。動物から人に感染する疾患を人獣共通感染症(zoonosis)といい、ペットを飼っている場合、様々な感染症の可能性があるため注意が必要です。特に猫・犬・小鳥・ウサギなど接触頻度が高い動物には、注意する必要があります。ペットと暮らす際には、排泄物を避けること・ペットの小屋や水槽、かごの掃除は家族に依頼すること・過剰な接触は避け、接触後は手洗いうがいの徹底を心掛けましょう

ご家族の方の生活

普段通りの生活で構いません。孫と遊びたい。一緒に食事したい。とお孫さんへの影響を考えて孤立してしまう方を何人も見てきました。心配ありません‼

絶対に連絡が欲しい副作用

発熱

絶対に連絡が欲しい副作用として、発熱です。白血球が少ないときに起こる発熱は非常に危険です。発熱性好中球減少症と言われる危険な副作用の1つになりますので、必ずご連絡ください。ほかにも普段と異なるし、とても辛いということがあればすぐにご連絡ください。我慢は禁物ですよ。

最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を１日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

薬剤師まさ