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【詳しく解説】乳がん治療のAC療法


ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

治療方法についてまとめていきたいと思います。いきなり治療の説明をされても、暗号のような名前の数々を言われ、いただいた用紙を見直しても理解不能になることがあると思います。ご自宅に帰ってから調べる際、結局わからないこともあるかと思います。ズバッとまとめてみました。


乳がんの方はみんな髪抜けちゃうの?
そうなんです。かなり抜けてしまう作用のある抗がん剤が含まれているので、抜けてしまいますね。

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AC療法

AC療法の対象疾患

AC療法は乳がん患者さんのための治療方法です。乳がん治療における術前(手術前)や術後(手術後)に実施することがありますし、転移しており手術が困難である場合には、最初から選択されることがございます。


AC療法の治療スケジュール

薬の名前day1day2-21
吐き気止め
ドキソルビシン
エンドキサン
  • AC療法は3週間を1セット
  • 22日目が2コース目のday1になる
  • 体調が悪い場合は開始が遅れることがある

とされております。治療回数は4回と言われています。ですが術後化学療法においてDose-dense ACと呼ばれる、 乳癌術後化学療法においてAC療法を3週毎から2週毎に短縮して4サイクル投与する治療法が存在します。治療感覚を狭めることで副作用の発現が多くなることが示されている一方で、治療効果が高いことが見込まれている報告があります。状態によって医師が使い分けておりますでの、AC療法は3週間毎か2週毎のDose-dense AC療法のいずれかになると思います。


AC療法の治療の目的と期待される効果

AC療法の目的はStageとタイミングによって大きく異なります。

手術前に抗がん剤を投与する目的として、手術を行うことが困難な進行乳がんを手術できるようにしたり、しこりが大きいために乳房温存手術が困難な乳がんを小さくして温存できるようにする効果があります。Neo-adjuvant Chemotherapy(ネオアジュヴァントケモセラピー)とカッコよく言ったりします。

では術後に抗がん剤を行う目的として、 目では見えないぐらい綺麗にがん細胞を取り除くことができていたとしても、どこかに潜んでいる可能性があります。その微小転移を根絶させることです。Adjuvant Chemotherapy(アジュヴァントケモセラピー)とカッコよく言ったりします。 術前・術後いずれも治療実施によってがんを取り除くことを考えた治療になっております。

他の臓器に転移している場合や再発した場合には、がん細胞を完全に根絶させることは困難です。進行を抑えることで延命効果を得たり、症状を和らげる目的で抗がん剤治療を実施します。


AC療法の副作用

採血でわかる副作用と注意点

骨髄抑制

白血球や赤血球・血小板など血液の成分が全体的に低下することを骨髄抑制といいます。実際にAC療法は外来通院で治療ができてしまう治療方法です。そのため輸血に頼ることはあまりありませんので、貧血が強すぎてふらふら・血が止まらないぐらい血小板が低いということはありません。

気を付けて欲しいのは白血球減少です。白血球減少が起きても、たとえ白血球が0になっても体では異変がありません。ですが、普段風邪をひかないでいるのも体の中に入ってきたばい菌を白血球がやっつけてくれるから風邪をひかずに済んでいるですね。なので、日頃の手洗いうがいを行い感染症にならないよう注意する必要があります。

白血球を増やす薬:G-CSF

これを一日でも短くするために白血球を増やす注射を行います。それを皆さんG-CSFと表現することが多いです。G-CSFとは白血球の家族の一員である好中球を増やす指令であり、人工的に作った成分です。それを投与することで感染症になりやすい期間を一日でも短くすることを目的に投与したりしています。


実際に感じる副作用と注意点

一番怖いものですよね。何が起こるの?というより自分の体はどうなっちゃうのかというところ。危険をある程度理解していることで、注意すべき点がわかりますので、ぜひ知っていただけると嬉しいです。

抗がん剤の副作用において重要なのは、「いつ何が起こるか」という時期です。

上の図に示す通り、時期によって副作用の出現するものが大きく異なります。時期を意識して解説を行いたいと思います。


AC療法 day1-day7までに起こりそうな副作用

気持ち悪さ・嘔吐

副作用対策としてしっかりとした吐き気止めは使っております。AC療法は抗がん剤治療の中でも吐き気が起こりやすいと言われております。しっかりと準備はしておりますが、出現してしまうことがあります。万が一吐いてしまった場合、2回目の治療では更なる強化をして準備しますのでご安心をして下さい。トイレでゲーゲーしているイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は吐き気止めも進化しております。また吐き気や嘔吐が出た場合にも使える薬が沢山あります。必ず我慢せず教えてください。

倦怠感

点滴した数日後に出現したりすることがございます。改善することがなかなか難しく時間が解決してくれるのを待つこともしばしば。ですが、吐き気止め(デカドロン)を数日間服用したりします。期間を延ばしてあげたりするだけでも倦怠感の改善につながることもあり、相談してほしい副作用の1つです

便秘

抗がん剤治療の副作用対策に吐き気止めを用います。吐き気は消化管が異常に動くことで嘔吐・嘔気が出現しますので、動きを止めてしまいます。胃だけ動きを止めることは不可能ですので、お腹の動きを止めてしまい便秘になってしまいます。実は便秘で困るのは苦しいだけではなく、硬い便が出てたことによってお尻が痔のようになるのが一番困ります。切り傷になりますので、ばい菌の入り口=感染源になることがありますので、柔らかくしましょう。

口内炎

粘膜障害の一種である口内炎ですが、抗がん剤の直接的なダメージによって傷がついてしまう状態です。こちらもお尻同様に感染源になることがありますので、必死にうがいをしていただけたらと思います。

AC療法 day8-day14までに起こりそうな副作用

骨髄抑制です。

とにかく感染対策を行いましょう。外出時はマスク着用・手洗いうがいは必須です。ですが、家で引きこもり状態になる方もいらっしゃいますが、そこまで厳重でなくても構いません。普段通りの生活で、家に戻ってきたら手洗いうがいをお願い致します。

AC療法 day15-day21までに起こりそうな副作用

この頃から脱毛が始まります。

脱毛は必ず起こります。ドサッと抜けてしまいます。だいたい2~3週間後と言われており、2コース目開始する頃から抜けると言われております。治療が終了すれば生えてはきます。ですが髪質がやや弱弱しくなることが多いです。医療用かつら(ウィッグ)の準備をしてもいいかもしれません。

坊主にするのは避けてください‼詳細はリンクに記載してあります。かゆくなってしまうんです~。

AC療法 2コース目以降に起こる副作用

一般的には21日間の流れを繰り返すと言われております。

皮膚障害

皮膚障害の1つですが爪の変色・変形です。比較的長期間継続しておりますと爪が黒くなってきます。ひどい方は、爪が浮いてきたり、割れてきたりすることがございます。爪のコーティングをしてもよいかもしれません。治療開始後に困った場合には医療従事者にご相談ください。

他にも困るのが

味覚障害です。

味覚障害は大多数の抗がん剤において発症するリスクがあり、治療で用いる抗がん剤からも味覚障害は必ず起こると言っても過言ではございません。食べやすいものを見つけながら、上手に対処していきましょう。


家族が考えるAC療法の注意点

自宅の環境的注意点

動物を飼っている方注意してください。動物から人に感染する疾患を人獣共通感染症(zoonosis)といい、ペットを飼っている場合、様々な感染症の可能性があるため注意が必要です。特に猫・犬・小鳥・ウサギなど接触頻度が高い動物には、注意する必要があります。ペットと暮らす際には、排泄物を避けること・ペットの小屋や水槽、かごの掃除は家族に依頼すること・過剰な接触は避け、接触後は手洗いうがいの徹底を心掛けましょう


ご家族の方の生活

普段通りの生活で構いません。孫と遊びたい。一緒に食事したい。とお孫さんへの影響を考えて孤立してしまう方を何人も見てきました。心配ありません‼

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絶対に連絡が欲しい副作用

発熱

絶対に連絡が欲しい副作用として、発熱です。白血球が少ないときに起こる発熱は非常に危険です。発熱性好中球減少症と言われる危険な副作用の1つになりますので、必ずご連絡ください。ほかにも普段と異なるし、とても辛いということがあればすぐにご連絡ください。我慢は禁物ですよ。

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患者さんからよくいただく質問と回答

治療日の尿が赤い…ドキソルビシンの赤い点滴が排尿時に着色します。血ではないので驚かないでくださいね。


最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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