ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。
最近、がん遺伝子パネル検査が保険償還されましたね。がん遺伝子治療の幕開け?かもしれません。ですが、先走ってはいけません。実はまだまだ問題が山積みでもあります。比較的いいニュースを耳にしますので、いい部分と悪い部分の現状についてまとめてみました。
がん遺伝子パネル検査
がん遺伝子パネル検査とは
保険の何がお得なの?
がん遺伝子パネル検査の検査は検体提出時8万円(8000点)、結果説明時48万円(4万8000点)で1回56万円します。それが保険として一部負担で済んでしまう形になっています。とても良いですよね。さすが日本!
誰でもできるの?
実はここに問題があります。がん患者全員ではありません。標準治療がない、もしくは終了となった固形がん患者のうち、主治医が化学療法の適応となる可能性が高いと判断した患者に対して、実施することができます。
どこでもできるの?
実施できる施設は、がんゲノム医療中核拠点病院11施設と、それに準ずる医療機関で実施することができます。
がんゲノム医療中核拠点病院11施設とは、
- 北海道大学病院
- 東北大学病院
- 国立がん研究センター中央病院
- 国立がん研究センター東病院
- 慶應義塾大学病院
- 東京大学医学部附属病院
- 名古屋大学医学部附属病院
- 大阪大学医学部附属病院
- 京都大学医学部附属病院
- 岡山大学病院
- 九州大学病院
となっています。がんゲノム医療連携病院は約100施設あります。そこでも検査を実施することはできます。
がん遺伝子パネルの効果
実際の治療貢献度
NCCオンコパネル検査では、114 個の遺伝子の変異を検出し、また免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響を与える腫瘍変異負荷の評価と、加えてがん患者さんが生まれながらにもつ遺伝子変異(生殖細胞系列変異)とがん細胞の中だけで起こっている遺伝子変異(体細胞遺伝子変異)を区別できることから、遺伝的に発生した腫瘍の診療に役立つ結果が得られる場合もあります。
現在、プレテストの段階では、10%強の患者さんが見つかった遺伝子変異に基づいた抗がん剤の治療を受けました。
遺伝子がわかっても治療がなければ意味がない?
10人に1人しか治療に繋げられていないと書きましたが、現在開発中の治験にエントリーする事が容易になるのも事実です。またこれから開発されてくる新薬の対象になりえることも考えられます。当たればラッキーと思うレベルなのかもしれません。
では治療方法が合致した場合
遺伝子検査の結果、効果が期待される薬剤の情報が得られた場合には、
「適応外申請を行って自費診療で治療を行う」、あるいは「先進医療実施病院を紹介して、自費診療と保険診療を並行して治療を行う」可能性が考えられます。とても凄いことがさらっと書いてありますね。
適応外申請と自費診療
この2点が非常に難題です。適応外申請は、病院の中で本当に使ってもいいかについて議論があり、その結果を待ってから治療開始になります。どの程度時間がかかるかは各施設によって大きく異なりますが、数日でできることはまずないかと思います。標準治療がなくなり、すぐにでも治療したいのに病院全体の会議の承諾を待たなければならない法律が存在します。
続いて、自費診療です。例えばHER2が陽性の肺がんであった場合、ハーセプチン(トラスツズマブ)は本来であれば適応外のため使用することができません。ですがこの制度を利用して治療可能になったとしましょう。
体重が50kgであった場合、《3週毎トラスツズマブ(3週ごと18回)》の治療を実施。通常であれば保険が負担してくれるため65万円(初回の支払い4.7万円 2回目以降3.5万円)の費用で済みますが、自費となる場合総額およそ216万円になります。
国が考える法律と実臨床の大きな隔たり
標準治療がない人に遺伝子検査をして、適応外申請の承認を待って医薬品の準備を行って治療できる。治療する患者の支払う金額の補助はなし。これが本当にゲノム医療を推進していく姿勢なのか疑問に思うところがあります。ただ安全性が保障されていない抗がん剤をむやみに使用する状況を食い止めるためには仕方ない法律なのかもしれません。より簡便化され、費用負担のない治療になることを願っている次第であります。
最後までご覧いただきありがとうございます。
読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。
薬剤師まさ
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