ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。
ベージニオはがん細胞が増えるための細胞周期を止め続けることで抗腫瘍効果を持つ、新しいタイプの「再発・転移乳がん」の治療薬です。 乳がん治療は、がんの進行を抑えることで症状を和らげ、QOL(生活の質)を保つことが目標となります。そのQOLを保つための注意点について解説します。
ベージニオ
ベージニオとは
ベージニオ:アベマシクリブとは細胞は、「CDK4および6阻害薬」に分類され、CDK4やCDK6に結びつくことでそのはたらきを抑えます。現在、イブランス:パルボシクリブ製剤とベージニオ:アベマシクリブの2つが承認されております。
CDK4/6阻害薬 と作用機序
細胞が1つから2つに増えるこの増殖の過程を「細胞周期」といいます。
細胞周期は、このG1期→S期→G2期→M期を1周回ると細胞が二つに分裂します。これは正常細胞もがん細胞も同様な働きをしております。しかし、がん細胞では、この細胞周期をコントロールする物質である「CDK4」や「CDK6」が異常に活動(ブレーキが壊れている状態)し、がん細胞が無秩序に増殖してしまう状態になっています。そのためベージニオを毎日服用することで、がん細胞の細胞周期を止め続け、細胞周期にブレーキがかかり、増殖が止まります。
ホルモン剤との併用が必要
ベージニオと一緒に使うホルモン療法薬 として
- アロマターゼ阻害薬(アロマシン,アリミデックス,フェマーラ)
男性ホルモンからエストロゲンをつくるアロマターゼという酵素を阻害するお薬。閉経後の患者さんに使います。
- 抗エストロゲン薬(タモキシフェン,フェソロデックスなど)
エストロゲンが結びつくところ(受容体)に作用して、エストロゲンのはたらきを抑えるお薬。
- LH-RHアゴニスト製剤(リュープリンなど)
卵巣でエストロゲンがつくられないようにするお薬。閉経前の患者さんに使います。
対象疾患
ベージニオは、ホルモン受容体陽性でHER2*陰性の乳がんに対して、ホルモン療法薬と一緒に使われるお薬です。
ルミナールAタイプ
ホルモン受容体陽性タイプは総じてLuminal(以下ルミナル)タイプと呼ばれ、乳がん全体の60~70%程度を占めるもっとも多いタイプです。このうち、増殖能力が低いルミナルAタイプは、ホルモン受容体陽性乳がんの典型的なタイプといえ、ベージニオの適応となります。原則ホルモン受容体をもつ乳がんは、女性ホルモンをエサとして増殖するため、ホルモン療法が推奨されています。ただしリンパ節転移が4個以上ある場合など、がん細胞の悪性度が高い場合は再発リスクが高くなることから、化学療法の追加が考慮されます。
治療スケジュールと副作用
服用方法
- 内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはベージニオ:アベマシクリブとして1回150mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量するとされています。
- 副作用の程度によって、1回の量を減らしたり、一時的に休薬することがあります。
1日2回、毎日決まった時間に規則正しく服用しましょう。食事の前後どちらでも服用することができます。生活のリズムを意識した形で服用が確実にできる時間帯を見つけ飲みましょう
服用時の注意点
- 自己判断で服用を中止しないでください。副作用などで飲むのが難しい場合は、主治医に相談しましょう。
- 決められた時間に服用し忘れたら、1回とばして、次の決められた時間に1回分服用してください。誤って2回分を1度に飲まないようにしましょう。
- ベージニオには、一緒にとることでベージニオの副作用が出やすくなったり、効果が弱まったりする食品やお薬があります。 他の病院や薬局に行く際は、必ずベージニオを飲んでいることを医師や薬剤師に伝えてください。
- グレープフルーツやグレープフルーツジュースは避けましょう。
注意していただきたい副作用
下痢
- ベージニオを服用すると軽度な方まで含めると多くの人が下痢を経験します。回数が多かったり水様便が続く場合には、下痢止めの薬やベージニオの量を調整したりすることで症状が緩和できます。
- 個人差もありますが、比較的服用後1週間前後で下痢があらわれる人が多いようです。
下痢が多い場合には、
咳・息切れの増加
- 間質性肺炎が起こることがあり、早めに対処する必要があります。
- ベージニオを飲み始めてから、新たに「動くと息切れがしたり息苦しくなるようになった」、「空咳が止まらない」「発熱する」などの症状がある場合は、主治医に連絡してください。
最近、ブルーレターとして注意喚起がされた1つになります。ブルーレター(国が発信する注意喚起文書)が出ることは滅多になく、間質性肺炎に関する危険性があると思われます。ただし、早期対応することによって症状緩和→間質性肺炎の治療がスムーズに行えます。我慢せずに病院にご連絡ください
ブルーレターについて以前まとめたものがあります。ご参考になれば嬉しいです。
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倦怠感
- 疲労感やだるさを感じることがあります。
- だるいときは無理せずに、しばらく横になるなどしましょう。長引くときは我慢せず、主治医、看護師、薬剤師に相談してください。
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脱毛
一部の方で髪の毛がうすくなると感じることがあります。多くは、かつらや付け毛を使わなくてもよい程度です。抜け毛が多いかなと感じる程度で見た目の変化は分からない程度ではあります。
ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。 抗がん剤治療においてイメージが強い、脱毛について紹介したいと思います。抗がん剤と聞いたら、誰しもが髪が抜けるというイメージありますよね。実は最近の抗がん剤の中には、髪が抜けない抗がん剤が増[…]
最後までご覧いただきありがとうございます。
読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。
薬剤師まさ