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大腸がんの左右差【右のベバシズマブ,左のアービタックス・ベクティビックス】

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

大腸がんの左右差で予後が変わるかもしれないという報告が出てから解析が進んでおり、続々と改名されつつあります。 「右側の大腸がんは脾彎曲まで」「左側の大腸がんは下行結腸、S状結腸、直腸S状部含む」と分けられています。また臨床症状では、右側では不顕性の出血による鉄欠乏性貧血が多く、左側では血便や排便困難が多くみられると言われています。そんな左右差が、予後まで変えてしまう可能性があり、その真相について追及します。

左右によって予後が違うなんて怖いよ…どっちが悪いの?
確かにそうですよね。今世の中ではどんなことが報告されているかについてまとめてみました。参考にしてください。

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大腸がん

大腸がんの右側と左側

大腸がんの予後を決めるかもしれない左右差について紹介します。先ほど冒頭でもちらっと書きましたが、下記の図のような場所を左右と表現します。

このような形で左右と表現します。ご覧の通り絵は大腸になりますが、大腸は結腸と直腸をまとめて表現するものになっております。結腸にも分類分けがあり、横行結腸・上行結腸・下行結腸・S状結腸に分類されています。

右側の大腸がんは、横行結腸と上行結腸に腫瘍がある場合を指します
左側の大腸がんは、下行結腸・S状結腸と直腸に腫瘍がある場合を指します

予後がいいと報告あるのは右側?左側?

大腸がんの発症頻度は右側:26%・左側:74%の方が多いと言われております。国立がん研究センターが公表したがん患者の5年生存率の集計結果を見ると、すべてのがんの平均5年生存率は65.2%でした。部位別で見ると、5大がんでは胃がん70.4%、大腸がん72.6%、肝臓がん38.5%、肺がん39.1%、乳がん(女性のみ)92.7%と報告されておりました。大腸がんの治療効果は5年生存率はどの病期(ステージ)でも比較的高く、予後が良い、または治療が進んでいるがんであることがうかがえます。

治療効果は高い中にも左右差があるとされていおり、

生存期間(中央値): 右側 < 左側

と報告されており、多くの方は左側の予後が良い方。ただし注意して欲しいのが、右側に自分はあるから、すぐに死んでしまうのか…というのは違います。この原因となる理由が発見されています。まだまだ右側の方の方が予後は全体的に悪いかもしれませんが、どんどん差が詰められる作戦が色々考えられています。


なぜ予後が左右で異なるのか

なぜ左右差があったか。この理由は遺伝子の発現に違いがあったからでした。

  • 右側ではBRAF, MSI, KRAS, PIK3CAなど予後不良因子とされる変異が多い
  • 左側ではEGFR, HER2など染色体の変化や部分的な欠損が多い

と言われております。左側では、抗EGFR阻害薬であるアービタックス(Cetuximab)の治療効果は有意に左側結腸癌で良好であるという報告もあります。右側の遺伝子異常は一般的に予後不良因子と言われているがん関連遺伝子であり、まだまだ開発途中の薬が多い分野になっております。なので時期に右側に強い薬が出てくることが予想されます。その一つにペムブロリズマブ(キートルーダ)が挙げられます。MSI-Highに使用可能であり劇的に効果を発揮すると言われておりますが、この遺伝子変異は右側の大腸がんに多いと言われております。右側の大腸がんでMSI-Highの遺伝子異常にキートルーダを使用した場合、左側の大腸がんの平均寿命よりはるかに長いことが予想されます。なので、開発が追いついていないのが現状であり、今後大きく変わることが予想されます。


左右差の予後は実はすべての大腸がん患者さんではない?

今まで書いていた内容は実はStageⅣと診断され治療される方のお話しです。StageⅢまでは手術で取り切れることが可能であり、積極的に手術を行うことが推奨されております。またさらに術後化学療法で目で見えない雑草の根っこのようながん細胞を取り除く治療を実施することで左右差がないことが示唆される報告があります。まだまだ今後のデータ蓄積が重要な問題です。

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左右の特徴から考える治療選択

RAS遺伝子が野生型の場合(変異していない)

RAS/BRAF野生型大腸癌には,原発巣占居部位が左側ではより抗EGFR抗体薬(ベクティビックス・アービタックス)が、右側ではよりBEV併用が推奨される。もしRAS/BRAF変異型であった場合には、基本的にはベバシズマブの投与が一般的である。(抗EGFR抗体薬の効果が得られないため)

またBRAF変異大腸癌ではFOLFOXIRI+BEV併用療法の高い有効性が報告されており、年齢・PSや併存疾患の有無を考慮して適用可能と判断されれば、とても強力であり、いっぺんにすべての薬を使ってしまいますが、第一選択として推奨されています。

遺伝子の状況に応じて治療選択がされていますね。必ず治療する前にはこの遺伝子検査が全例実施されており、その状況に合わせて治療薬が決まっていきます。

手術できれば関係ない

基本的に切り取れてしまえばがん細胞はいないので、右も左も大きく治療効果・生存期間には大きく影響しない可能性があります。ただ、術後化学療法は受けていただいた上での話であることに注意が必要です。術後化学療法は、ゼローダ・エルプラット(オキサリプラチン)併用療法でも6カ月間の術後化学療法が推奨されています。上手にマネジメントしながら、半年間しっかりと治療することが望ましいです。


Take Home message

  • 大腸がんには治療効果を分ける上で左右差が重要である
  • 左の方が治療効果は高いが、遺伝子の違いが発見されつつありその差は埋まりつつある
  • 手術を含む根治を目指した治療では左右差はあまり意識しなくてもいい

最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

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