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抗がん剤との飲み合わせ

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです

先日、とても痛ましい報道がありました。 報道によると1回分の処方量が「ワーファリン0.5mg 1.5錠」と書かれた処方箋について、事務スタッフが誤った処方内容をパソコンに入力し、薬剤師が患者にワーファリン錠1mgを1錠とワーファリン錠0.5mgを1錠交付していた。調剤の過程で、薬剤師は処方箋と入力内容を照合したがミスに気付かず、別の薬剤師は誤入力した情報を基に調剤していた。

日テレNEWS NNN

日本テレビ系NNN30局の各局トップページへのリンク一覧です。[…]

なんか全然違うものだけど、なんでこんなになっちゃうの?
ワーファリンには規格が複数あり、ワーファリン1.5錠という数字が0.5㎎の錠剤で入力するところを1㎎の規格で入力してしまったのかもしれません

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薬局での調剤ミス

薬剤部のミス

日々多忙な業務の中で絶対に間違いをしてはいけません。様々な対策をしながら業務に取り組んでいますが、やはり全部防げていないのが問題です。確実な払い出し、ミスをなくすために多くの医療機器が開発されておりますが、病院経営や薬局経営において投資資金が無いせいか、多くの病院には普及していないのが現状かと思います。どんどんアナログ化させ、業務効率を低下させ、さらには現場に長い時間いない上の人間が作る非現実的な非効率のルールに苦しんでいる薬剤師も多いのかと思います。


薬剤師が関連した調剤ミスの報告

8244軒の調剤薬局での「薬剤取り間違え」「数量間違い」が5399件あったと2014年度の日本医療機能評価機構の報告にて挙げらえております。特に発生時間帯では「午前10時から正午まで」に集中しているとのこと。報告された5399件を発生時間帯別では、午前10時から正午までに2044件・37.9%と、実に4割近くのヒヤリ・ハット事例がこの時間帯に発生していたとのことです。


今回の調剤ミスについて考察

過量投与と脳出血の関連性

今回ワーファリンという薬剤が過量になったことで、脳内出血が引き起ったと言われております。ですが、「因果関係は明確になっていない」と言われております。メディアは恰も「絶対に過量内服による副作用」と判断しているようですが、「因果関係がわかっていない」という言葉がすべてだと思います。


ワーファリン過量内服との因果関係とは

ワーファリンは血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防に適応を取得しております。もともと血栓症がある方などに使用する薬剤となっております。ワーファリンは血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤とされております。

難しく書きましたが、ワーファリンの服用によって個々のさらさら具合は異なるため、採血の値(プロトロンビン時間及びトロンボテストなど)を見て、調整していきます。

副作用として煽っているけど…

確かにワーファリンの副作用において、出血のリスクは考えられます。ですが、採血結果のデータがなければ、ワーファリンの副作用として断言はできません。因果関係がわからないというのは、この採血結果・亡くなってしまった方の既往歴や治療の程度によって大きく変わってしまうため、メディアの断言染みた良い方はどうなのかとも思ってしまいます。ただ薬局の取り違いの事故は許されませんが。


がん治療におけるワーファリン

がん治療とワーファリンの関係

現在がん治療されている方の中にも飲まれている方いらっしゃるのではないでしょうか。がん患者さんでワーファリン治療が行われているのは、

  • 深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)といった静脈血栓塞栓症(VTE)や心房細動などに罹患していたためにがん発症以前よりワルファリンを内服していた
  • がんという血栓症の危険因子を発症したためにがん診断時または治療経過中にVTEを発症した場合

があります。がんになっただけで血栓症のリスクが非常に高くなると言われており、内服が始まることが多々あるかもしれません。


抗がん剤治療とワーファリンの注意点

一般的に薬の飲み合わせについて薬剤師の相談してくださいと言われることが多いと思います。ワーファリン…とても注意が必要です。抗がん剤との飲み合わせは様々な観点から注意が必要であると言われており、必ず教えていただきたい情報の1つであります。

がん化学療法とワーファリン治療が併行して行われている場合には次のような注意点があります。抗がん剤のなかには、ワーファリンの効果に影響を与えるものが少なくないため、その都度薬物相互作用の確認が必要です。

  • 抗がん剤治療に伴って食欲低下をきたすとワーファリンに拮抗するビタミンKの摂取も低下するため、ワルファリン過剰投与になります。(※カリウムとは別ですよ。ビタミンK(ケー)というものがあります。
  • 抗がん剤治療により感染症を併発し抗生剤が投与されると、ビタミンKの産生源である腸内細菌も死滅するため、ワーファリンの過剰投与のような値になります(痛み止めのNSAIDの併用があればさらに影響が大きいです)
  • 肝胆膵悪性疾患(腫瘍)に伴う胆道閉塞やPTCD(経皮経肝胆管ドレナージ)のために胆汁排泄の低下をきたすと、ワーファリンの過剰投与のような状態になります(ビタミンKは脂溶性ビタミンのため、吸収のために胆汁が必要)

抗がん剤自体との飲み合わせ

ワーファリンはCYP2C9という酵素で分解されます…(;´・ω・)…え。なんですかそれ。って感じになりますよね。人間が毒素を分解する過程において、様々な方法を使って解毒し、糞や尿中に分解して排泄しております。その分解するための専用の道路というイメージを持っていただけるといいかもしれません。高速道路はETCがあるように交通量は制限されますが、交通量が一定数であることを考慮して薬の量を決めておりますが、その専用道路に大量に集まると制限がかけられない=服用量は同じでも血液中では過量になります。それが飲み合わせが悪いという表現の1つの要因です。

  • フルオロウラシル系抗がん剤
  • ゲフィチニブ,イマチニブ
  • タモキシフェン,トレミフェン

が代表的なものとして挙げられます。


フルオロウラシル系抗がん剤

一般的にフルオロウラシル(fluorouracil、5-フルオロウラシル)は、5-FUという名前で世の中に出ていることがあります。大腸がん治療中の方や食道がんは第一選択の薬剤になりますので聞いたことがあるかと思います。該当する薬剤としては、

  • 5-FU(フルオロウラシル)
  • ティーエスワン(エスエーワンなどジェネリック)
  • ゼローダ(カペシタビン)
  • UFT

が挙げられます。治療が始まる前にワーファリンを服用している方は必ずお伝えください


タモキシフェン,トレミフェン

一般的に乳がん治療している方、その中でもホルモンが陽性である方が服用する薬剤になっております。ホルモン陽性の乳がん治療される方は注意が必要です


ゲフィチニブ

ゲフィチニブは、非小細胞肺がんの治療薬であるイレッサという薬剤のことを指します。


イマチニブ

慢性骨髄性白血病の治療薬であるグリベックを指します。前回私も慢性骨髄性白血病の治療についてまとめてみました。ご参考までにリンクを貼りますね

薬剤師まさブログ

白血病の1つ慢性骨髄性白血病:CMLについてまとめました。慢性骨髄性白血病は血液のがんの中でも比較的ゆっくり進行する種類の1つです。現在、グリベックを始めとした治療薬の登場によって大幅に治療成績を改善することができました。[…]


患者さんからよくある質問と回答

納豆ずっと食べるので、それで調整してもいいですか?
納豆には枯草菌である納豆菌が腸内でビタミンKが合成され、ワーファリンの効果を弱めてしまいます。また納豆菌がなかなか腸管内にいますので、ワーファリンの服用量で調整することができないパワーを持っています。どうしても心の友である納豆が食べたいという方は違う薬もありますので、薬剤の変更しましょう。禁止されると突然食べたくなりますよね…なぜか

最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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