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【解説】パクリタキセル・アブラキサン(ナブパクリタキセル)の副作用と対策

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

様々な癌腫で使用されるパクリタキセル・アブラキサン(ナブパクリタキセル)ですが、多くの副作用を持っております。多くの副作用を持つ反面、抗がん剤としての腫瘍を壊す力もあり、現在の抗がん剤治療において必要不可欠な薬剤たちになっております。副作用を上手にコントロールすることができれば、日常生活を難なく送ることができると思います。副作用と対策について紹介したいと思います。


副作用がない抗がん剤があればいいのにね~。
抗がん剤の副作用は細胞が攻撃されたことによって生じている作用になるので、副作用がなかったらがん細胞は全く死滅しないことが予想されます。難しいですね。

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パクリタキセルとアブラキサン

パクリタキセルの適応患者

パクリタキセル療法は、 卵巣癌・非小細胞肺癌・乳癌・胃癌・子宮体癌・再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌・再発又は遠隔転移を有する食道癌・血管肉腫・進行又は再発の子宮頸癌・再発又は難治性の胚細胞腫瘍(精巣腫瘍、卵巣腫瘍、性腺外腫瘍) に使用することができると言われております。とても多くの治療に用いられていることがわかりますね。

治療タイミングは、手術前・手術後・根治が厳しいためがん細胞の成長を食い止めるタイミングとすべてのタイミングで用いられることから、パクリタキセルを投与する際には何を目標にパクリタキセルを投与するのか確認する必要があります。

パクリタキセル療法の治療スケジュール

パクリタキセル 投与法①

薬の名前

day1 day2~21 day22(day1)

パクリタキセル

1日1回 210mg/㎡(体表面積あたり)を3時間かけて点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。 3週間毎の治療スケジュールになっております。パクリタキセルだけの投与やカルボプラチンと組み合わせた肺がん治療に用いられます。

パクリタキセル 投与法②

薬の名前

day1 day8 day15 day22 day29 day36 day43

パクリタキセル

1日1回 100mg/㎡(体表面積)を1時間かけて点滴静注し、週1回 投与を6週連続し、少なくとも2週間休薬する。これを1 クールとして、投与を繰り返す。 この投与方法は主に乳がん治療に用いられます。

AC療法+パクリタキセルのような組み合わせで治療することが一般的ですが、この時のパクリタキセルは12週間連続で行きます。雑草の根っこを取り除く治療です。

パクリタキセル 投与法③

薬の名前

day1 day8 day15 day22

パクリタキセル

1日1回 80mg/㎡(体表面積)を1時間かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続する。これを1クールとして、投与を繰り返す。

抗がん剤は同じパクリタキセルであっても投与量や投与期間、投与方法が全然異なります。一般的には「〇〇がん」=パクリタキセルはこの投与方法となっており、我々薬剤師はこれらをすべて確認しております。医師がオーダーされているものが本当に適切か、安全かこれらをすべての患者さんに確認しています。皆様が投与するパクリタキセルは、こっそり薬剤師から全例チェックされております。

ナブパクリタキセルの適応患者

ナブパクリタキセル(アブラキサン)は、乳癌、胃癌、非小細胞肺癌、治癒切除不能な膵癌となっており、パクリタキセルに比べてとても少ない適応症になっております。まだ研究結果が明らかになっていないため、このような形になっております。

アブラキサン(ナブパクリタキセル)療法の治療スケジュール

アブラキサン 投与法①

薬の名前

day1 day2~21 day22(day1)

アブラキサン

(ナブパクリタキセル)

1日1回260mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。一般的に胃がんや乳がんに使用する方法ですが、胃がん治療において副作用が強く投与法②が開発されました。

アブラキサン 投与法②

薬の名前

day1 day8 day15 day22

アブラキサン

(パクリタキセル)

1日1回100mg/m2(体表面積)を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間休薬する。週1回投与を3週間連続し、4週目は休薬する。これを1コースとして、投与を繰り返す。

抗がん剤は同じアブラキサン(ナブパクリタキセル)もパクリタキセルと同様に投与量や投与期間、投与方法が全然異なります。これも一般的には「〇〇がん」=パクリタキセルはこの投与方法となっており、我々薬剤師はこれらをすべて確認しております。医師がオーダーされているものが本当に適切か、安全かこれらをすべての患者さんに確認しています。

パクリタキセル・アブラキサン(ナブパクリタキセル)の副作用

採血からわかる副作用と注意点

骨髄抑制

白血球や赤血球・血小板など血液の成分が全体的に低下することを骨髄抑制といいます。実際にパクリタキセルとアブラキサン(ナブパクリタキセル)療法は、外来通院で治療ができてしまう治療方法です。そのため輸血に頼ることはあまりありませんので、貧血が強すぎてふらふら・血が止まらないぐらい血小板が低いということはありません。

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白血球を増やす薬:G-CSF

これを一日でも短くするために白血球を増やす注射を行います。それを皆さんG-CSFと表現することが多いです。G-CSFとは白血球の家族の一員である好中球を増やす指令であり、人工的に作った成分です。それを投与することで感染症になりやすい期間を一日でも短くすることを目的に投与したりしています。ただし、パクリタキセルとアブラキサン(ナブパクリタキセル)療法において、必要になることは少ないかもしれません

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実際に感じる副作用と注意点

一番怖いものですよね。何が起こるの?というより自分の体はどうなっちゃうのかというところ。危険をある程度理解していることで、注意すべき点がわかりますので、ぜひ知っていただけると嬉しいです。

抗がん剤の副作用において重要なのは、「いつ何が起こるか」という時期です

上の図に示す通り、時期によって副作用の出現するものが大きく異なります。時期を意識して解説を行いたいと思います。


パクリタキセル/アブラキサン(ナブパクリタキセル)療法 day1-7までに起こりそうな副作用

気持ち悪さ・嘔吐

副作用対策として吐き気止めは使っていないことがあります。ですが、まれに出現してしまうことがあります。なぜ使わないか?パクリタキセルとアブラキサン(ナブパクリタキセル)は、抗がん剤としての吐き気の出やすさは、低リスクと言われております。そのため吐き気止めは不要になっております。

万が一吐いてしまった場合、2回目の治療では更なる強化をして準備しますのでご安心を。

絶対に吐き気が起こらないようにコントロールしてみせます。

トイレでゲーゲーしているイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今は吐き気止めも進化しております。また吐き気や嘔吐が出た場合にも使える薬が沢山あります。我慢せず教えてください。

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倦怠感

これはday3.4に出てくることがあります。改善することがなかなか難しく時間が解決してくれるのを待つこともしばしば。デカドロンの服用を数日延ばしてあげると倦怠感の改善につながることもあり、相談してほしい副作用の1つです。

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筋肉痛

20人に1人程度の割合で関節痛・筋肉痛を感じる方がいます。パクリタキセルやアブラキサン(ナブパクリタキセル)を注射してから2~3日後に症状が現れ、数日以内におさまってきます。特に背中や足の関節や筋肉で痛みを感じることが多いです。

痛みを感じはじめたら、その周囲を十分にマッサージし血液の流れをよく保つと良いと言われています。また鎮痛剤での症状の軽減が期待されています。痛みがある方は試してみる価値があると思います。ぜひ点滴している近くにいる医療従事者にご相談ください。


パクリタキセル/アブラキサン(ナブパクリタキセル) 療法 day8-14までに起こりそうな副作用

骨髄抑制です。

とにかく感染対策を行いましょう。外出時はマスク着用・手洗いうがいは必須です。ですが、家で引きこもり状態になる方もいらっしゃいますが、そこまで厳重でなくても構いません。普段通りの生活で、家に戻ってきたら手洗いうがいをお願い致します。

ただし‼砂埃が凄いところ・埃が多いところ・ガーデニングなどの泥や土を触ることはだめです。カビが非常に多く、一度かかると1か月程度カビの治療をしないといけません。お守りください


パクリタキセル/アブラキサン(ナブパクリタキセル) 療法 day15-21までに起こりそうな副作用

この頃から脱毛が始まります。

脱毛は必ず起こります。ただし抜ける程度は個人差があります。だいたい2~3週間後と言われており、2コース目開始する頃から抜けると言われております。パクリタキセルの前の治療で抜けてしまっている人も生えてこない期間が続く形になります。ただし治療が終了すれば生えてはきます。ですが髪質がやや弱弱しくなることが多いです。その髪すら生え変わってくると今まで通りになることもあります。脱毛の程度によって医療用かつら(ウィッグ)の準備をしてもいいかもしれません。

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坊主にするのは避けてください‼詳細はリンクに記載してあります。かゆくなってしまうんです


パクリタキセル/アブラキサン(ナブパクリタキセル) 療法2コース以降に注意していただきたい副作用

一般的には21~28日間の流れを繰り返すと言われております。

末梢神経障害はあとからじわじわとやってきます。

毎週の方ですと、100mg/㎡で投与している方、3週間に1回ですと、175mg/㎡で投与されている方ですと痺れが起こりやすいと言われております。特に指先と足の裏に出現してくると言われており、有効な治療方法がございません。基本的には治療薬を減らすor中止が最も有効な対処方法です。医療従事者には痺れの程度がわかりません。必ず状態について教えてください。

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他にも困るのが

味覚障害です。

味覚障害は大多数の抗がん剤において発症するリスクがあり、治療で用いる抗がん剤からも味覚障害は必ず起こると言っても過言ではございません。食べやすいものを見つけながら、上手に対処していきましょう

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家族が考える
パクリタキセル/アブラキサン(ナブパクリタキセル) 療法の注意点

自宅の環境的な注意点

普段通りで構いませんが、動物を飼っている方は注意してください。動物から人に感染する疾患を人獣共通感染症(zoonosis)といい、ペットを飼っている場合、様々な感染症の可能性があるため注意が必要です。特に猫・犬・小鳥・ウサギなど接触頻度が高い動物には、注意する必要があります。ペットと暮らす際には、排泄物を避けること・ペットの小屋や水槽、かごの掃除は家族に依頼すること・過剰な接触は避け、接触後は手洗いうがいの徹底を心掛けましょう

ご家族の方の生活

普段通りの生活で構いません。孫と遊びたい。一緒に食事したい。とお孫さんへの影響を考えて孤立してしまう方を何人も見てきました。心配ありません‼

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絶対に欲しい連絡

発熱

絶対に連絡が欲しい副作用として、発熱です。白血球が少ないときに起こる発熱は非常に危険です。発熱性好中球減少症と言われる危険な副作用の1つになりますので、必ずご連絡ください。ほかにも普段と異なるし、とても辛いということがあればすぐにご連絡ください。我慢は禁物ですよ。

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最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。少しでも参考になった方はぜひ下のboxをポチっとお願いいたします。

薬剤師まさ

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