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【味が変?】抗がん剤による味覚障害を乗り越えよう

ご覧いただきありがとうございます。薬剤師まさです。

抗がん剤による味覚障害はとても苦しいです。まず食事を摂ることが困難になり、体重減少・食欲不振になることも多々あります。また医療スタッフにも「頑張って食べましょうね」「家に帰ったら食べれるようになります」と言われて食べることができたら食べてるわ~と心の中で訴えていた方もいたかと思います。

難敵「味覚障害」についてまとめました。ご参考になれば幸いです。


味覚障害って味がおかしくなるの?
そうですね。味が正確に感じられないため味が変わるが正解なのかもしれません。

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味覚障害

味覚障害とは

味覚障害は癌治療(放射線療法・化学療法・併用)に共通する口腔内の合併症の1つであり、QOL(Quality of Life:生活の質)低下につながるとされている。化学療法のみによる味覚障害の有病率は56%であり、放射線治療によっても味覚障害が発現することから、組み合わせた場合、より多くの患者において有している症状であると考えられる。

なぜ起こる味覚障害~敵を知る~

味覚障害は様々な要因で起こるとされております。

  • 口の中の粘膜が抗がん剤によってダメージを受ける
  • 味の伝達する神経障害
  • 味を感じる味蕾(みらい)細胞がダメージを受け正常に働かなくなる
  • 亜鉛不足
  • 唾液不足
  • 感染症(舌苔というカビの一種)

様々な要因で味覚障害が誘発されてしまいます。これを確認し、最も適切な対処方法を探しているのが医療従事者の役割なのかもしれません。


味覚と分類

味覚は甘味、酸味、苦味、塩味のほかに、旨味(うまみ)で構成されています。この味は、味蕾(みらい)細胞というセンサーによって感じ取られ、脳に伝達されます。味蕾細胞は年齢によっても数が減るため、味覚低下が誘発されることから、おじいちゃん・おばあちゃんの料理の味付けは濃くなってしまいます

濃いのはわざとではありません。どうしても濃いものでないと味が感じなくなってしまうのです。


抗がん剤による味覚障害

抗がん剤による味覚障害は、主に二つの要因が考えられます。

  • 味の伝達する神経障害
  • 味を感じる味蕾(みらい)細胞がダメージを受け正常に働かなくなる

口腔内ケアを怠ると、

  • 唾液不足
  • 感染症(舌苔というカビの一種)

が誘発されたりします。

またがん治療における味覚障害には、共通した報告があります。

R-CHOP療法・CHOP療法など、ビンカアルカロイド系(オンコビン/ビンクリスチン)を使用した患者のアンケート調査では、塩味が失われやすいと言われております。甘味にはあまり変化は与えず、比較的正常に維持される可能性があります。ですがステロイドと呼ばれる副腎皮質ステロイドを使用する場合、甘味にも影響を及ぼす可能性があると報告があります。
がん治療は様々な抗がん剤の組み合わせを行うため、抗がん剤によって誘発される味覚障害は重篤である可能性があり、多くの食べ物の味覚が変化・失われてしまいます。

亜鉛を摂った方がいい?

味蕾細胞は通常、細胞分裂をして新生交代されますが、体内の亜鉛が不足すると、細胞のターンオーバーが延長し、機能低下を来すと言われております。

そもそも味蕾細胞が抗がん剤によってダメージを受けるため、亜鉛の摂取による味覚改善が期待しにくいことが考えられます。


嗅覚異常も影響する

抗がん剤による嗅覚異常も食欲低下には大きく影響を与えます。投与3日目で嗅覚変化があり、においに対して敏感になった方や不快なにおいを感じるようになった方が50%以上いたという報告がされている。
 
報告では、食事量低下の指摘がされていましたが、味覚障害+嗅覚異常のダブルパンチによるものであると考えられます。抗がん剤による食欲不振は、味覚障害や嗅覚異常、抗がん剤そのものによる吐き気など、多くの要因が重なっています。

治療方法

薬物治療

正直に言うとありません。亜鉛の服用について検討することもありますが、抗がん剤治療による味覚障害の改善には有効でない可能性が考えられます。ですが味蕾細胞の回復を促進させる効果があるため、完全に意味がないと言い切れないのも事実です。


口腔内の乾燥を防ぐ

乾燥を防ぐ=唾液の分泌を増やすことが重要です。唾液は口腔内を清潔に保つために必要な成分であり、舌苔(牛乳飲んだ後のような白い膜で擦っても取れないもの)を生成しにくくする作用を持っています。舌苔は感染症の1つ(主な原因は口腔内のカビ)であり、味蕾細胞への伝達を阻害することで味覚障害を誘発させます入れ歯を使用している方は特に舌苔が出来やすく、意識的に口腔内ケアが重要になります。

舌苔ができてしまった場合は、お薬で治療するのがいいかと思います。我慢せずに教えてください!


食事の工夫

食べないともっと身体が悪くなってしまうと思うあまり、食べられない現実からさらに辛くなってしまうことがあるかと思います。身体の調子に合わせて食べられるもの、食べやすいものから食べるようにすることが大切です。3食しっかりとじゃなくても構いませんし、バランスが取れていないようなものでも構いません。食べない、飲まないを避けられるよう食べられるものを見つけて欲しいと思います。


食事の工夫方法

体重減少があるとき

体重が減る場合、長期間食事量が著しく低下していることが予想されます。その状況で食べる量を増やすというのは、不可能だと思います。(できたら食べていますよね…)この場合、食べれる範囲での摂取カロリーを増やすことを心掛けましょう!

エネルギーが高い油を使った料理やジャムなどの糖分が多いものにしてみましょう。アイスクリームもおススメですよ!例えばハーゲンダッツは1個あたり、244kcalあります。白飯のお茶碗1杯分のカロリーが約235kcalと言われており、ほぼご飯を食べたエネルギー量と同じ分取れます。

治療の影響でご飯が食べれないとき

一般的に抗がん剤治療による副作用の強い時期を過ぎれば食べられるようになることが多いので、上手く吐き気どめを使いながら生活しましょう。一定期間の間、食べにくいときは状態に合わせて消化しやすい食事にしましょう。また、食べたいと思ったときにすぐに食べられるように、好きなものを手元に用意しておくと良いかもしれません。

食事の品数を多くし、1品1品を少量ずつ、かつ小さな食器に盛り付け。また味付けは好みに合わせて少し濃いめにし、主食はすし飯にしたり、少し冷ました一口大のおにぎりなどにすると食べやすくなります。

吐き気や嘔吐で困っているとき

味覚障害によってイメージと異なる味になってしまうことや嗅覚異常によって変化したにおい、また出された食事の見た目などが吐き気・嘔吐の原因になることもあります。食材や調理法、盛り付けなどを工夫したり、刺激の少ないもの、温度を抑えて、においを出しにくいものを選ぶのが良いかもしれません。吐き気や嘔吐の原因によっては、無理して食べたりしない方がよい場合もありますので、医療スタッフに相談しましょう。吐き気止めや胃腸の働きを促す薬を処方されることもあります。

冷たいものや、お蕎麦などあっさりとしたもの、口当たりのよいもの、のみ込みやすいものが食べやすいようです。水分の多い果物や野菜(スイカ、みかん、りんご、なし、トマトなど)、プリン、シャーベット、ゼリー、卵豆腐などのような食品を少しずつとるとよいでしょう。

患者さんからよくある質問と回答

塩味、しょうゆ味が苦く感じたり、金属を舐めているように感じるときがあります
一般的に塩味を控えめにして、食べられそうな味を試すことが望ましいです。オススメするのはだしを効かせたり、ごまやゆずなどの香りや、酢を利用して風味を添えると食べやすくなると言われております。試してみてください!
甘味に過敏になり、何でも甘く感じる場合もあります
一般的に料理に砂糖やみりんを使わず、塩味やしょうゆ味、みそ味など、味がはっきりとした濃いめに味をを試してみてはどうでしょうか。また酢、ゆず、レモンなどの酸味を加えてあげても良いかもしれません。汁物は食べられることが多いようです。

最後までご覧いただきありがとうございます。 

読んでいただいた方が、より安全な抗がん剤治療を受けられるように願っています。また元気な時間を1日でも長く・楽しく・素敵な思い出を作れるよう、副作用を気にしないで生活できるように貢献できるよう情報を発信していきたいと思います。

薬剤師まさ

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